『現代と保育 73号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.6
連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん> vol.6
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『動物の心とふれあう絵本』
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寒空の中、息子(5歳)にせがまれて公園に二人で遊びに行った時のこと。
ちょうどお昼時で、公園には私達の他には誰もいませんでした。代わりに近所ののら猫達が3、4匹。
ボール遊びをしていた私達ですが、視線の隅でのんびりと走りまわる小さな影が気になって仕方のない息子。
「ちょっと猫と遊んでくる!」
我慢できなくなった息子は、私を置いて走り去っていきます。
「そんなに簡単には遊んでもらえないぞ。」
どれどれお手並み拝見と遠くから眺めていると、息子はベンチに腰掛け、のら猫達を意識しながらもじっと座っています。微妙な間合いを保ちながら、徐々に距離を詰めていきます。
やがて、そっとしっぽを触り、体をなでて。長く静かな時間の後、とうとうのら猫クンの方から息子へ寄り添ってきて・・・!
やるじゃないか、息子。ペットを飼っている訳でもないのに、いつの間にそんな方法を覚えたのでしょう。
その光景にはちょっと感動してしまいました。
そして、ふと思い出したのが一冊の絵本。マリー・ホール・エッツの『わたしとあそんで』。
「わたしとあそんで」
まるで同じ様なシーンがあるのです。子どもの頃の私は、その絵本を読んで大きく影響を受けたのです。
幼い頃から動物達と友達として遊ぶのが当たり前の様に過ごしてきたエッツが描くのは、子どもと動物達との心の触れ合う瞬間。その方法は、息子の様に自然と体得してしまう子もいれば、私のように絵本から学ぶ事だってあるのです。
もちろん実際に動物園に行って間近で見る、触る。動物の事を知るにはこれ以上の方法はないかもしれません。でも動物と心を通い合わせる喜びというのは、絵本を読んでいく中でも子ども達は体験できるのではないでしょうか。
では具体的に、他にどんな絵本があるでしょう。
「みんなうんち」
まずは『みんなうんち』。これは(もう少し小さかった頃の)我が息子の場合だけ、かもしれませんが。
「ぼく」と同じように、色々な動物達が出てきてうんちをします。
それぞれの動物が堂々と、そして少し自慢気にうんちをします。息子も負けじとうんちをします。
トイレから報告が入ります。「こんなに大きなうんちが出たから見て!」もしかして張り合っている?
いや、うんちで心を通わせ合う・・・素晴らしいではありませんか。
『どうぶつのあかちゃんうまれた』では、色々な動物達の出産シーンを次々と紹介してくれます。
普段は動物園でしか見られないようなキリン、ゾウ、カバなどの誕生の瞬間の珍しい場面。愛情たっぷりかつとってもリアルに描かれています。その感動の前では、人間も動物も区別などありません。
生命の尊さをこれほどシンプルに力強く訴えかけてくれるものもありません。子ども達には見せるだけで伝わるはずです。
「はなをくんくん」
ちょっと変化球ではこんな絵本。『はなをくんくん』は、静かに雪の降る森の中で冬眠していた動物たちが目を覚まし、鼻をくんくんしながら何かに向かって走り出す・・・というお話です。見つけたものは、とっても可愛い小さな「春」。子ども達と読んでいると、鼻をくんくんさせる場面(何のにおいかな?)、何かに向かって走り出す場面(何があるのかな?)、探しものを見つけた時の喜びなど、絵本の中の動物達と完全に心が一体化している様子が伝わってきます。
最後は極めて絵本らしく夢のあるお話『おやすみごりらくん』。
一日の仕事を終えた夜の動物園のどうぶつ達と夜ベットで一緒に寝る!
動物が大好きな子ども達にとって、一度は見る共通の大きな夢!ですが・・・動物達の方はなかなかそうは思ってくれないようで。
こればっかりは、現実として心を通わせる事は難しそうですね(笑)。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。
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