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2009年04月22日

『現代と保育 73号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.6

現代と保育 73号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.6


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『動物の心とふれあう絵本』
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寒空の中、息子(5歳)にせがまれて公園に二人で遊びに行った時のこと。
ちょうどお昼時で、公園には私達の他には誰もいませんでした。代わりに近所ののら猫達が3、4匹。
ボール遊びをしていた私達ですが、視線の隅でのんびりと走りまわる小さな影が気になって仕方のない息子。
「ちょっと猫と遊んでくる!」
我慢できなくなった息子は、私を置いて走り去っていきます。
「そんなに簡単には遊んでもらえないぞ。」
どれどれお手並み拝見と遠くから眺めていると、息子はベンチに腰掛け、のら猫達を意識しながらもじっと座っています。微妙な間合いを保ちながら、徐々に距離を詰めていきます。
やがて、そっとしっぽを触り、体をなでて。長く静かな時間の後、とうとうのら猫クンの方から息子へ寄り添ってきて・・・!
やるじゃないか、息子。ペットを飼っている訳でもないのに、いつの間にそんな方法を覚えたのでしょう。
その光景にはちょっと感動してしまいました。
そして、ふと思い出したのが一冊の絵本。マリー・ホール・エッツの『わたしとあそんで』。

ehon062.jpg  「わたしとあそんで

まるで同じ様なシーンがあるのです。子どもの頃の私は、その絵本を読んで大きく影響を受けたのです。
幼い頃から動物達と友達として遊ぶのが当たり前の様に過ごしてきたエッツが描くのは、子どもと動物達との心の触れ合う瞬間。その方法は、息子の様に自然と体得してしまう子もいれば、私のように絵本から学ぶ事だってあるのです。
もちろん実際に動物園に行って間近で見る、触る。動物の事を知るにはこれ以上の方法はないかもしれません。でも動物と心を通い合わせる喜びというのは、絵本を読んでいく中でも子ども達は体験できるのではないでしょうか。
では具体的に、他にどんな絵本があるでしょう。

4-8340-0848-7.jpg 「みんなうんち
 
まずは『みんなうんち』。これは(もう少し小さかった頃の)我が息子の場合だけ、かもしれませんが。
「ぼく」と同じように、色々な動物達が出てきてうんちをします。
それぞれの動物が堂々と、そして少し自慢気にうんちをします。息子も負けじとうんちをします。
トイレから報告が入ります。「こんなに大きなうんちが出たから見て!」もしかして張り合っている?
いや、うんちで心を通わせ合う・・・素晴らしいではありませんか。

Ehon_22594.jpg 「どうぶつのあかちゃんうまれた

『どうぶつのあかちゃんうまれた』では、色々な動物達の出産シーンを次々と紹介してくれます。
普段は動物園でしか見られないようなキリン、ゾウ、カバなどの誕生の瞬間の珍しい場面。愛情たっぷりかつとってもリアルに描かれています。その感動の前では、人間も動物も区別などありません。
生命の尊さをこれほどシンプルに力強く訴えかけてくれるものもありません。子ども達には見せるだけで伝わるはずです。

4-8340-0095-8.jpg 「はなをくんくん

ちょっと変化球ではこんな絵本。『はなをくんくん』は、静かに雪の降る森の中で冬眠していた動物たちが目を覚まし、鼻をくんくんしながら何かに向かって走り出す・・・というお話です。見つけたものは、とっても可愛い小さな「春」。子ども達と読んでいると、鼻をくんくんさせる場面(何のにおいかな?)、何かに向かって走り出す場面(何があるのかな?)、探しものを見つけた時の喜びなど、絵本の中の動物達と完全に心が一体化している様子が伝わってきます。

no2946_blog.jpg 「おやすみごりらくん

最後は極めて絵本らしく夢のあるお話『おやすみごりらくん』。
一日の仕事を終えた夜の動物園のどうぶつ達と夜ベットで一緒に寝る!
動物が大好きな子ども達にとって、一度は見る共通の大きな夢!ですが・・・動物達の方はなかなかそうは思ってくれないようで。
こればっかりは、現実として心を通わせる事は難しそうですね(笑)。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。

 バックナンバーも合わせてどうぞ・・・

◆『現代と保育 72号』 子どもとあそぶえほん(5) 笑う門には福来る!       >>>
◆『現代と保育 71号』 子どもとあそぶえほん(4) 小さな心に芽生えた友情    >>>
◆『現代と保育 70号』 子どもとあそぶえほん(3) 子どもたちのスーパーアイドル!>>>
◆『現代と保育 69号』 子どもとあそぶえほん(2) 野菜が(ちょっとでも)好きになる本 >>>
◆『現代と保育 68号』 子どもとあそぶえほん(1) 木がある生活        >>>

『現代と保育 72号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.5

現代と保育 72号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.5

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『笑う門には福来る!』
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 子どもの笑顔を見ると、幸せな気分になる。だから、いつでも笑っていてほしい。

 これは、子どもにかかわっている方々にとっては、当然の願いですよね。でも、日常生活で
子どもたちを笑わせようとするのって、意外とむずかしい。とくに、いらいらしてしまっている時な
んかだとね・・・・・・。
 そこで登場なのが「絵本」。なかなか頼もしい味方なのです。
 怒ってしまってどうしようもない時、試しに絵本を一冊取り出して。ほら、そんな気分のままじ
ゃとても読めないはず。声に出して読んでいくうちに、いつのまにかその世界に入りこんでしま
うでしょう。心が落ち着いてきます。そして、読み終わるころには、自分も子どももにっこり笑顔!
これは実話です。

 今回は、そんな「思わず笑っちゃうような絵本」をご紹介します。


1324.jpg
 「おひさまあはは

 まずは、小さな子でもつられて笑顔になってしまう『おひさまあはは』。とにかく、登場する花も
木もおひさまもみーんな大きな口を開けて「あはは」。こんなに無邪気な笑顔に囲まれたら、ふ
くれっつらのぼくだって思わず・・・・・・。それは、ただ本能で笑ってるだけ?いやいやそんなこ
とありません。ちゃんとユーモアだって通じるんです。

ehon17129.jpg 「だるまさんが」 

 「だるまさんが・・・・・・」のあとに続くのは?予想もつかない展開と、愛らしいだるまさんのあん
な顔こんな顔に、子どもからおとなまで大爆笑してしまう絵本『だるまさんが』は、赤ちゃんだっ
て大喜びするんですよ。

Ehon_315.jpg 「キャベツくん

 そしてこんなすごい絵本もあります。『キャベツくん』。ブタがキャベツを食べて「ブキャッ!」。
おとなが、「どうしておもしろいのかな」なんて考えている間に子どもたちは大笑い。この不思議
なユーモアセンス、じつは子どものほうが深く理解できるのです。作者の長新太さんの頭の中、
一体どうなっているんでしょうね?見てみたいものです。

ehon10646.jpg 「おならうた

 お次は理屈抜きの『おならうた』。いもくって ぶ、すかして へ・・・・・・。言うことはありません。
ただ笑えます。「おなら、うんち」は子どもたちの笑いのてっぱんですね、残念なことに。

ehon1878.jpg 「だじゃれどうぶつえん

 もう一つ、子どもたちの好きな笑いの中で忘れちゃならないのが、だじゃれ。だじゃれはおや
じのもの?と侮るなかれ。『だじゃれどうぶつえん』、だじゃれだけで構成されているこの絵本、
シリーズでもう五冊も出ている盛り上がりようなんです。けっこう頭を使い、センスもいるあそび
なんですよね。

1002.jpg 「11ぴきのねことあほうどり」 

 最後は私も大好きな『11ぴきのねこ』シリーズ。どれもおとながにやっとしてしまうような、シュ
ールな笑いが含まれていてうれしくなってしまうのですが、果たしてこのおもしろさが子どもにも
理解できるのか?・・・・・・なんて、やっぱり心配御無用。子どもたちは当然のように、このシリー
ズが大好き。何度でもくり返し読んでいます。
 とくに『11ぴきのねことあほうどり』で十一ぴきめのあほうどりが登場するシーンが来ると、何
回読んでもひっくり返って笑ってくれるのです。そんな様子を見ていると、絵本をとおして作者と
子どもたちが(わたしたちおとなをよそに)一枚上のユーモアセンスをもって心が通じ合っている
のではないかと思ってしまいます。その心のやりとりを感じながら、私たちおとなは油断すると、
ちょっと置いてかれた気分になってしまうのです。

 恐るべしユーモア絵本。これは、おとなにも必要なジャンルに違いありません。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。

 バックナンバーも合わせてどうぞ・・・

◆『現代と保育 73号』 子どもとあそぶえほん(6) 動物の心とふれあう絵本    >>>
◆『現代と保育 71号』 子どもとあそぶえほん(4) 小さな心に芽生えた友情    >>>
◆『現代と保育 70号』 子どもとあそぶえほん(3) 子どもたちのスーパーアイドル!>>>
◆『現代と保育 69号』 子どもとあそぶえほん(2) 野菜が(ちょっとでも)好きになる本 >>>
◆『現代と保育 68号』 子どもとあそぶえほん(1) 木がある生活        >>>

『現代と保育 71号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.4

現代と保育 71号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.4

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『小さな心に芽生えた友情』
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 「働くママ」という立場上、保育園にいる時間がとっても長い息子。園生活というのは、現場の
先生方にほぼお任せになってしまっているのが現状です。それでも、大好きなお友だちと毎日
いっしょに楽しそうにあそんでいるようで、安心していました。

 ところが、四月から年中さんに・・・・・・というその直前。仲よしのお友だちが違う保育園に移っ
てしまうと聞かされ、親子でぽかーんと立ち尽くしてしまいました。まだ「お別れ」なんて縁のな
い話だと思っていたので、親のほうが動揺。「大丈夫かな?」「四月からちゃんと楽しく過ごせ
るかな?」
 でも考えてみれば、「お友だちと離れ離れになって悲しい」―そういう気持ちを持つようにな
るほど成長した、ということなのですよね。小さく見える子どもたちの心の中にも、「友情」とい
うものがそれなりに育っているようで。

ehon536.jpg 「おんなじ おんなじ」 

『おんなじ おんなじ』は最初のお友だち絵本です。いっ
しょに遊ぶのうれしいな、お揃いってうれしいな。息子の友情と言えば、まだまだかわいいこん
な感じ?

4-8340-0435-X.jpg 「こっこさんのともだち

 でも、ふと同じクラスのまわりを見まわす、(とくに女の子は)もうちょっと複雑なことになってい
たりして・・・・・・先を行っているのですね。そんな繊細な気持ちが伝わってくるのが『コッコさん
のともだち』。

4-8340-0514-3.jpg 「たろうのともだち」 

 友だち作りって、年齢に関係なくけっこう大変。心細かった気持ちを思い出して、ちょっぴり
切なくなったりします。だからこそ、永遠に絵本のテーマとして扱われるのですね。ヒントがたく
さん隠されています。たとば『たろうのともだち』。
 「まずはあいさつをしてみる」
 「いやなことははっきり言う」
 「小さい者や弱い者に威張らない」
 なるほど、これならスムーズにともだちが作れそうな気がしてきます。なにより、こんな関係は
すがすがしいですね。男の子らしい世界なのかもしれません。私も実践、実践。

 さて四月がすぎて、ふと気がつけば、お迎えに行ってもなかなか帰らないほど、新しいお友だ
ちと楽しそうに遊んでいる息子。「なーんだ、取り越し苦労だったのね」。でもちょっと様子が違
うのは、しょっちゅう取っ組み合いのケンカをして転げまわったり、どちらかが泣いていたり。と
ころが次の日になると、くっついて笑っていたり。今度はケンカ友だち?意外と立ち直りが早い
のが子どもです。ちょっと安心しました。それにしても、どうせ避けては通れない、この「ケンカ」。
先生方が、それを良しとしてくれるのが頼もしいかぎりです。

Ehon_2494.jpg 「けんかのきもち」 

 迫力のあるケンカのシーンをみごとに描いた『けんかのきもち』。くやしい気持ち、抑えられな
い怒り・・・・・・まわりのおとながこの気持ちをどう扱うかでどんなふうに成長するかが決まってく
る、そう思うと緊張感も感じる一冊です。男の子を持つ親としては、覚悟を決めることが大事な
のかもしれませんね。
 そして、そうは言っても時々「○○ちゃんに合いたいな」とつぶやいたりもする息子。そんなと
き、さびしい気持ちの対処法に一役かったのが「お手紙」でした。何を書くか、一生懸命考える
姿は健気です。受け取ったお友だちも喜んでくれて、大満足。相手にしっかり気持ちを伝える、
こういう経験はとても大事にしてほしいのです。

ehon8670.jpg 「きもち」 

 『きもち』という絵本があります。自分の中に生まれては消えるいろいろな「きもち」のことを考
える。ひとの「きもち」との違いを考える。多くは語らずとも、この二つだけで、子どもたちはどれ
だけ大きな成長を遂げるでしょうか。大きくなっても、くり返し読んでほしい一冊です。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。

 バックナンバーも合わせてどうぞ・・・

◆『現代と保育 73号』 子どもとあそぶえほん(6) 動物の心とふれあう絵本  >>>
◆『現代と保育 72号』 子どもとあそぶえほん(5) 笑う門には福来る!     >>>
◆『現代と保育 70号』 子どもとあそぶえほん(3) 子どもたちのスーパーアイドル!>>>
◆『現代と保育 69号』 子どもとあそぶえほん(2) 野菜が(ちょっとでも)好きになる本 >>>
◆『現代と保育 68号』 子どもとあそぶえほん(1) 木がある生活        >>>

『現代と保育 70号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.3

現代と保育 70号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.3

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  『子どもたちのスーパーアイドル!』 
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 息子が二歳のころの話です。
 気候も暖かくなってきて、保育園でも、外へ出て小さなお庭で遊ぶことが多くなります。ワイワイと騒がしく暴れまわる子どもたち。
 でも、ふと気がつくと何だかおかしい。息子のクラスのお友だちだけ、全員が庭の片隅で、じっとうずくまっているそうです(しかも、ばらばらでね)。不思議に思って覗いてみると、みんなの片手には小枝。そして、真剣な眼差しのその先には・・・・・・「だんご虫」。
 そうです。「地面や石の裏を、自分で拾ってきた棒でつつきながらだんご虫を探す」、このあそびがクラスで大ブームになっていたのです。傍から見ると気持ちのいいお天気の下で、黙々と探しているその姿はちょっと滑稽な風景。でも、本人たちの心は大興奮なのでした。

 聞けば、その年ごろの子どもたち、だいたい似たようなエピソードを持っているそう。持ち帰ってコレクションしていた・・・・・・なんて話を聞くと、「うちじゃなくてよかった」とほっとしたり。それにしても、何がそこまで子どもたちを惹きつけるのでしょうか。

ehon8305.jpg 「だんごむしと恐竜のレプトぼうや

 そんな息子の愛読書の一つが『だんごむしと恐竜のレプトぼうや』という本です。そもそも、あんなに小さくて黒くて地味な(と、私なんかは思ってしまう)虫を主人公にするなんて勇気があるなぁ、などと思いながら読んでみるとこれがとても規模のでかい!お話なのです。何しろだんご虫二匹(だんごむしとガールフレンドのだんこちゃん、けっこうリアルです)が恐竜と出会って冒険してしまうのですから。しかも、まいごになった恐竜のぼうやだんご虫とバッタが助けてあげる、という驚きの展開なのです。読んでいるうちに、思わず彼らが勇ましく見えてくるのもおもしろいのです。この本にはシリーズがあり、だんご虫が、空を飛んだり、海に出たり・・・・・・その規模たるや、想像を超えています。どもよく考えてみると、小さな小さな体の彼らにとって、日々の生活がそのまま、絵本の大冒険に匹敵するくらいエキサイティングなのかもしれませんね。

ehon4325.jpg 「ぼく、だんごむし

 そして、だんご虫の一番の魅力は、何と言ってもその動きでしょう。事実、子どもたちは触ると丸くなるという、その単調なくり返しを、飽きもせずいつまでも眺めています。『ぼくだんごむし』では、わかりやすいお話とイラストでだんご虫の生態を描いています。その動きだけでなく、もっと興味深いエピソードがたくさん出てきますよ。うんちが四角いとか、石やコンクリートを食べちゃう、とかね。


0208-6.jpg  ISBN4-494-00327-1.jpg  4-251-00112-5.jpg

 写真家の目線が魅力の『ダンゴムシ』は、びっくりする程アップの顔写真など、さながらアイドルの写真集のよう(!?)珍しい写真の数々は、おとなも興味を持たずにはいられません。

 『ころちゃんはだんごむし』みたいな、かわいらしい絵本だったら、虫は苦手!でもだんご虫なら・・・・・・なんて女の子だって楽しめるでしょう。虫の生態だってちゃんとおさえてあって、親しみが湧きそうです。それにしても、だんご虫って脱皮するんですね。

 だんご虫好きが高じてくると、今度はその動きを自分でもまねして喜ぶようになります。『でんぐりでんぐり』という絵本みたいに、だんご虫になりきって、ごろんごろんして遊ぶのも楽しそうです。


 こうして、だんご虫フィーバーが収まらなかったこのクラスは年度の終わりの発表会で「だんごむしダンス」を踊ってフィニッシュしたのでした。ブラボー!
・・・そして時はたち、すこし大きなグラウンドのある保育園に進級した息子。見つかるだんご虫の数は半端じゃなく・・・その様子を想像するのは、やめておきます。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。
 主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。

 バックナンバーも合わせてどうぞ・・・

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『現代と保育 69号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.2

現代と保育 69号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.2

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『野菜が(ちょっとでも)好きになる絵本!』
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 「絵本で野菜嫌いをなおそう!」・・・・・・なんておこがましいことは言いません(笑)。でも、興味や親近感を持ってもらうには、絵本はかなり有効ではないでしょうか。
                           
 たとえば、赤ちゃんの場合。
野菜も、最初はなにかわからずに、とりあえず食べている状態ですよね。
「イヤ」なんて言い出す前にまずはこれ。『やさいだいすき』。身近な野菜におめめがついてあっという間に赤ちゃんのかわいいお友だちに。純粋に、おもしろい形やきれいな色に興味がわいてきます。

yasai_1.jpg 「やさいだいすき」 
                          
 『やさいのおなか』は、野菜の断面図が影絵のように出てきて「これなーんだ」。なんだか見たことあるような・・・・・・おとなもけっこう真剣に考えちゃうこの絵本。子どもたちはその新鮮な形に夢中になります。わが家の息子が二歳のころ、実際に野菜が半分に切れるおもちゃ(包丁と野菜がセットで売られているもの)との合わせ技で、「野菜の断面」にかなり関心をもった時期がありました。料理の合間などに、そうやって覚えた野菜の「本物」を見つけると、思わず絵本のおもちゃと見比べて「おなじ、おなじ」。このときのうれしそうな顔がとてもいいのです。さらに「これ食べてみたい」なんて言葉が聞けたら大成功。
                           
yasai_2.jpg 「やさいのおなか

 『やさい』は、みずみずしくおいしそうな野菜の絵が画面いっぱいに描かれ、それが収穫される様子なども描かれています。「土で育てて収穫する」。そんなプロセスを知ったり、実際に体験したりすると、普段食べている野菜への親近感が圧倒的に違ってくるのは、現場の保育の先生方のほうがよく実感されているでしょうね。「出所」がわかると安心する、というのはおとなも同じですものね。

yasai_3.jpg 「やさい」 
                          
 主張がはっきりしてくる三歳くらいになるとちょっとやっかい。今まで平気で食べていたのに、突然「キライ!」とくる。そのかたくなまでの拒否、少しでも和らげてあげたいなぁ。
 とってもかわいいキャラクターの『そらまめくんのベッド』そら豆のさやが、こんなにふかふかで気持ちよさそうなものだったとは、おとなも改めて見て感心してしまうこの絵本。わが息子も保育園で育ったそら豆を大事そうに持って帰り、ぎゅっと握ったまま絵本を読んでいましたよ。だからと言ってすんなりそら豆を食べるわけではないのですけどね。
                           
yasai_4.jpg 「そらまめくんのベッド

 『サラダでげんき』は、角野栄子さんと長新太さんの愉快なナンセンス絵本。いろいろな動物が突然やって来てサラダづくりのポイントを教えてくれるのですが、これが意外なほどおいしそう!サラダを食べた病気のお母さんが、すっかり元気もりもりになる、という設定もいい。思わず「作ってみたい!」なんて子どもが言いだしたら、しめしめです。

yasai_5.jpg 「サラダでげんき
                           
 最後に『ぜったいたべないからね』。これはもう、好き嫌いの激しい妹と、あの手この手でなんとか食べさせようとする妹思いの兄との攻防戦のお話です。おとなではなかなか考えつかない奇想天外な発想がすばらしい。返す妹もぜんぜん負けていない。
 果たして妹は嫌いな野菜を口にするのか?・・・・・・なんてことはもしかしてそんなに重要ではなく、このやりとり、コミュニケーションのほうが大事なのかも・・・・・・と思わせてくれる粋な一冊ですよ。「嫌い」と言うのも子どもの一つの主張ですものね。

yasai.jpg ぜったいたべないからね

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


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 ◆『現代と保育 68号』 子どもとあそぶえほん(1) 木があるせいかつ       >>>


2009年04月21日

『現代と保育 68号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.1

現代と保育 68号』(ひとなる書房)より

連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん>  vol.1


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  『木がある生活』
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327090-6.gif 「木はいいなあ」 

 大きな木の、生い茂った葉っぱが風に揺れる音が好きで、天気の良い日に並木を見上げて歩きながら思い出す絵本があります。
 『木はいいなぁ』。題名の通り、木がある生活のすばらしさを描いた絵本です。かつて保育士として働いていた作者のユードリイが、自信の幼い頃の経験を子どもたちに伝えたいとつくられたお話で、その思いがおおらかで爽やかな文章や絵から素直に伝わってきます。
 具体的にストーリーがあるわけではないのでちょっとわかりにくいかなぁと思いつつ、三歳になったばかりだった息子と一緒に読んでみました。するとけっこう真剣に見入っています。横で「き、木、キ」。一生懸命発音の練習をしたりして。わかっているのかなぁ・・・・・・。

 ところがしばらく経ったある日、息子と外で散歩をしていると近くにあった木を見上げながら誰ともなしにつぶやいたのです。
 「木はいいなぁ・・・・・・」
 理解して言っているわけではないだろうけど、小さな子が実際の木を見ながらつぶやくその姿はちょっと感動的です。あぁ何かが伝わったのかなぁ、と。
 そこで高鳴るこの気持ちを胸に「木」がテーマになっている絵本を何冊か読んでみることにしました。

ehon4495_blog.jpg 「木のうた」 

 一冊目は一本の大きな木と、木をとりまく自然や生き物たちの一年の移り変わりを絵だけで表現している『木のうた』。洗練された絵だからこそ小さな子どもたちの感覚に響くのでしょう。装いの変化のその美しさに目を奪われます。

ehon8080.jpg 「」 

 『おおきなかぶ』(福音館書店)の絵を描いた彫刻家佐藤忠良は散歩の合間に木のデッサンをし始めて十五年になるそうです。その対話が『木』という絵本になっています。木と向かい合い続ける、そのことがそのまま木への賛歌となってデッサンに現れているようです。迫力のある存在感、表現の多彩さに圧倒されます。何回向き合っても帰ってくる答えは違うものかもしれませんね。

330150-X.gif 「おおきなきがほしい」 

 そして『おおきなきがほしい』は誰もが持っている木へのあこがれをそのままお話にしてくれているような絵本です。主人公の男の子かおるは、もし大きな木があったらこんなすてきな小屋をつくりたい、夢のある想像がふくらんでいきます。実際に大きな木に登ったことがあるからこその発想なのでしょうね、あの何とも言えない爽快な感覚が蘇ってくるようです。
 こうして読んでいくと私たちがどうして木に惹かれていくのかわかってくるような気がします。一旦根を下ろすと上へ上へ成長して大きくなっていくその姿にはあこがれを抱き、豊かな表情や季節ごとの変化は私たちの目を楽しませてくれます。でも、何より大きいのはその存在感。年月が経とうとも環境に変化があろうとも「そこに変わらず立っている」という安心感や包み込んでくれるような大きさに惹かれるのではないでしょうか。そして子どもたちは言葉なんかなくとも、木を見上げているだけでそういったことを感じているのかもしれません。実際に触れ、遊び、育てることで私たちが思っている以上のことを学んでいるのでしょう。木がある、ということはそれだけですばらしいことなのですね。

ehon6197.jpg 「ペカンの木のぼったよ」 

 もう一冊、大きなペカンという木が中心となって元気に子どもたちが毎日過ごしている幼稚園のお話
『ペカンの木のぼったよ』があります。重い障害をもつりんちゃんも一緒に毎日ペカンの木の下で過ごすのです。幼稚園の無邪気で優しいみんなが起こす賑やかな騒動を大きなペカンの木が包みこんでいる、このお話が大好きです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。

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2007年12月04日

sesame(セサミ)でカナガキ事務局長の連載がスタートしました

親子で楽しむ子どものファッション誌「sesame」で、カナガキ事務局長のコラム連載が始まりました。
題して、『親力がアップする絵本』
毎回、子育ての気づきが得られる絵本をご紹介します。
1月号のテーマは、『子どもが生まれたときの感動を思い出す』。
新しい年を迎えるフェレッシュな気持ちで読める絵本を3冊ご紹介します。
ページ内の『金柿パパのブレイクトーク』で近況報告も。
>>> 「sesame(セサミ)」のサイトはこちら
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2007年10月03日

sesame(セサミ)にカナガキ事務局長が登場しました

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sesame(セサミ) 2007年11月号 >>>

2007年10月01日

まいんど にカナガキ事務局長が登場しました

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まいんど >>>

三田評論にカナガキ事務局長が登場しました

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三田評論 >>>

2007年09月28日

Family Walkerにカナガキ事務局長が登場しました

familywalker_20071101_00.jpg

東京FamilyWalker'07秋号 >>>

2007年09月07日

読売新聞にカナガキ事務局長のコメントが掲載されました

yomiuri_20070907.jpg

2007年08月29日

NHK総合「パパサウルス」にパパ's絵本プロジェクトが登場

8/6(月)、8/27(月)の2回にわたり、NHK総合「パパサウルス」の「マンスリーパパサウルス」のコーナーに、パパ's絵本プロジェクトが登場しました。
http://www.nhk.or.jp/papasaurus/monthly_papa/index_20070806.html
(カナガキ事務局長もパパ's絵本プロジェクトのメンバーとして登場しました)

2007年08月06日

8月6日(月)22:50~NHK総合「パパサウルス」にパパ's絵本プロジェクトが登場します。

こんにちは、事務局長のカナガキです。

今夜10:50~11:00放送のNHK総合テレビ「パパサウルス」に、パパ's絵本プロジェクトのメンバーとして出ます。

>>> 放送内容はこちら

まあ10分番組の1コーナーなので数分の放送ですが、時間がありましたらご覧ください。

20070621_01.jpg


先日のメルマガもご紹介しました、6月に開催したパパ's絵本プロジェクト北軽井沢ジャンボリーの取材です。
>>>そのときのメルマガはこちら

今回の放送はパパズ中心、次回8/27放送予定は、ジャンボリーに参加した他のパパたちが登場しますよ。

2007年08月01日

AERA with Baby にカナガキ事務局長が登場しました

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AERA with Kids増刊号「AERA with Baby vol.2」、「大好き!がいっぱい詰まってる絵本とおもちゃは想像力の宝箱」コーナーにて、「パパだから、もっと楽しめる 絵本ナビ社長・金柿秀幸さんの読み聞かせのススメ」としてカナガキ事務局長が登場しています。

2007年07月13日

『公共ホームページ[good site]運動』の今月推奨サイトに選定されました!

財団法人高度映像情報センターが運営するサイト『公共ホームページ[good site]運動』で、「子どもたちの未来に伝承するもの」として、絵本ナビが今月の推奨サイトに選ばれました!
goodsite2.gifhttp://www.goodsite.gr.jp/

2007年07月09日

読売新聞にイソザキ編集長のコメントが掲載されました

2007年7月9日の読売新聞朝刊生活面の記事で、イソザキ編集長のコメントが掲載されました。

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[支えあって子育て]野菜嫌い 笑顔で克服
絵本通じ身近に・栽培体験で喜び

 子どもの野菜嫌いに頭を悩ます親は多い。野菜が登場する絵本の読み聞かせや畑での野菜栽培などを通して、まずは子どもに野菜を身近に感じさせることが、野菜嫌いを克服するポイントのようだ。

 東京都の会社員A子さん(36)は、長男(5)の野菜嫌いに困っている。昨冬から、お菓子ばかり間食して、トマトやキュウリ、キャベツなどの生野菜をほとんど食べなくなった。「無理やり食べさせようとしても、苦いから嫌などと言って口を開けようとしません」

 食品大手カゴメ(名古屋市)が昨春、幼児・児童を持つ親約4800人を対象に行った調査でも、子どもの食生活で困っていることのトップは、「偏食が多い・野菜が嫌い」(41%)。2位の「食べるのが遅い」(11%)以下を引き離した。

 野菜嫌いの克服について、NPO法人「みんなの食育」代表理事で管理栄養士の竹森美佐子さんは「子どもが野菜嫌いだという家庭は、実は、親も日ごろから野菜を食べていないことが多い。食べても食べなくても、必ず食卓に野菜を並べること。そのうえで、子どもが野菜を身近に感じられるような工夫をすることが大切」と指摘する。

 野菜を扱った絵本を活用する方法もある。絵本を紹介する情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんは最近、野菜を好きになるような本を教えてほしいという相談をよく受ける。「絵本に出てきた野菜が食卓にあると、子どもはとても親しみを覚えるようです」と磯崎さん。実際、同サイトには「正義の味方のピーマンが悪者を退治する絵本を5歳の長女に読み聞かせていたら、ピーマンを食べられるようになった」(山口県の母親)などというメールが数多く寄せられているという。

 東京都内の会社員B子さん(40)の長女(5)は、母親の料理のレシピ本を見るのが大好きだ。「以前は、キュウリなどの青野菜が苦手でした。でも、料理を作る際に、この野菜を入れるとおいしくなるんだよと言いながら一緒にレシピ本を見ていたら、いつの間にか好き嫌いがなくなりました」

 家庭や保育園などで、野菜を育て収穫する体験も貴重だ。静岡県函南(かんなみ)町の若葉保育園は、昨年から近くに畑を借りて、キュウリなど十数種類の野菜を園児が育てている。

 「水やりや草むしりなどをして野菜を育て、収穫する喜びを知ることで、野菜への愛着が生まれているようです」と園長の山田洋子さん。これまで苦手だったトマトを丸ごと食べられるようになったり、家庭でもナスなどの野菜を食べたいと親に注文したりする園児が増えたという。

 食育コーディネーターの大村直己さんが提案するのは、離乳のころから親と一緒に少しずつ野菜を食べることだ。菓子などの甘い味や刺激的な味に慣れてしまうと、野菜の素朴な味が分からなくなってしまう。「料理の手伝いをさせるなど、受け身ではなく、野菜を楽しく食べる経験を子どもに与えてほしい」と大村さんは話している。

(2007年7月9日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20070709ok01.htm?from=os1

ESSE(エッセ)におすすめ作品ページが掲載されました

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ESSE(エッセ)2007年8月号「子どもと一緒に楽しみたい おすすめ読み聞かせ絵本10」コーナーを、絵本ナビのカナガキ事務局長が監修しています。

日経WOMANにカナガキ事務局長が登場しました

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「人生を変える最高の本」特集の、各界のプロ30人が教える「人生のバイブル本」コーナーで、絵本ナビのカナガキ事務局長の人生を変えた一冊の絵本が紹介されています。

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