きみちゃんがアイスを食べていると、白いねこがやってきました。
「きみちゃん なに たべてんの。おいしそうやなあ。あ、この おさかな あげよか」
「いらない」
すぐに断るきみちゃんですが、「ふしぎねこ」と名乗った、ちょっぴりあやしい白ねこは、その場でいきなり自分の毛皮を脱ぎはじめます。
なんと毛皮の下からあらわれた体は、カラフルな水玉模様!
「これ きたら ねこに なれるねん。ねこのみち さんぽできるねんで。かしたげるわ」
毛皮ときみちゃんの着ているワンピースを交換する間、まんまときみちゃんのアイスを手に入れちゃったふしぎねこ。
ワクワク顔のきみちゃんは、毛皮を着ることに夢中で、アイスをとられたことに気づきません。
通りかかったとらねこの後をついて「新入り」としてねこの道を歩き出したきみちゃんは……、無事に帰ってこられるのでしょうか!?
顔はきみちゃん。体はねこの姿。
でも毛皮のおかげで、どうやら人から見ると全身ねこに見えるようです。
池の水面にうつるきみちゃんとふしぎねこの姿は、ちゃんと入れ替わっているんですから。
とらねこにつづいて細いへいの上を歩いたり、屋根をかけのぼったり、生垣を通りぬけたり……楽しそう!
ねこになるって、なかなかの大冒険です。
子どもの本の挿絵などで活躍する、藤原ヒロコさんの初絵本。
目や揺れる髪の動きにあらわれる、いきいきした子どもの表情がたまりません。
ねこの皮肉っぽいような目つきにも気ままなねこらしさが漂い、思わずくせになる可愛さです。
さんぽで出会う数々の脅威(カラスや他のねこや……)にきみちゃんはどう立ちむかうのでしょうか?
色あざやかな緑、赤い屋根やきみちゃんのワンピース、鉛筆の線とさまざまな目線の構図に心を奪われ、ドキドキしながらすっと絵の世界に入っていけます。
こんなふうにねこの毛皮を着て、ねこになってみたい!
ねこに負けないきみちゃんに、思わずふふっと笑いたくなる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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