「いってらっしゃい、おとうちゃん」
「おうっ、ぽんきち、でっかいの あげてやるからな」
今日は待ちに待ったお江戸の花火大会。ぽんきちのお父ちゃんは花火職人なのです。夜まで待ちきれないぽんきちは、家の中でうろうろ…落ち着きません。すると、お母ちゃんからお父ちゃんの夜食を届けるように頼まれました。
「うん、まかしといて!」
夜食を手に持ち、歩き出したぽんきちの姿をを見ると、町の人たちが「もう花火の時間だ!」と思い込み、仕事なんてそっちのけで次々についていきます。何しろ、誰もがぽんきちのお父ちゃんの花火を楽しみにしていますからね。ぽんきちの知らない間に、江戸の町には大行列が出来上がり…。さあ、いよいよ待ってましたの花火大会のはじまりです!
「ひゅー… どーん」
たしろちさとさんが初めて挑む和風絵本。その色合いから構図、キャラクターまで、新たな魅力をたっぷりと味わえるこの1冊。江戸の街並みを背景に、住人達の暮らしや着物や小道具など、どこの場面を切り取っても見飽きることなく楽しみながら、いつの間にか読者もクライマックスの花火シーンを待ちわびてドキドキしてきます。荷物を持って町をフラフラ歩く小さなぽんきちの姿も可愛すぎます。
でも、やっぱり何と言っても大迫力の花火シーン。広い夜の空に咲く大輪の花火、降ってくるような光のつぶ。江戸の人々と同じように、見とれてボーっとしてしまいます。夏の涼しい定番絵本の登場ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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