山の大きな木の中住む世話好きのうさぎが、ある春の日に看板を出しました。
「もりのおへやをしょうかいします。おへやのことならおまかせください」
まもなく、2羽のおおこのはずくがやってきました。たまごを生んでひなを育てられる場所を探しているのです。
「おまかせください。ぴったりのおへやがありますよ」
うさぎは2羽のおおこのはずくを、白い花が咲き始めたりんごの木に案内しました。木の枝の付け根には大きな穴が開いています。2羽は大喜び。やがてそこで3羽のもこもこの産毛に覆われたひなが生まれることになるのです。
他にも、おいしい木のみが食べられる場所を探すやまね、冬眠の場所を探すくまなど、森の住人たちが次々とうさぎの元にやってきます。その度に、ぴったりの場所に連れて行くうさぎ。自分しか知らないとっておきの場所を、惜しげもなくみなに教えてあげます。
作者は「つるばら村」シリーズ(講談社)など、数多くの童話を手がける茂市久美子さんと、愛らしい動物のイラストで大注目の画家しもかわらゆみさん。優しい文章と繊細に描かれたイラストは、読んでいる人をとても穏やかな気持ちにさせてくれます。お二人コンビの作品には、他にも『ごちそう たべに きてください』(講談社)があり、この絵本の姉妹本です。この優しい雰囲気が気に入ったら、ぜひこちらも合わせてお楽しみください。
(出合聡美 絵本ナビライター)
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