モグとアオメは、かわうそのきょうだい。
モグは、お兄ちゃんのアオメがつかまえた魚のフナを、横取りしようとして失敗します。
「食べたかったら、自分でとれよ」と言われ、くやしいモグ。
「ウナギをつかまえてひとりで食べてやる」と心に決めます。
ウナギをなかなか見つけられないまま、川を下り、とうとう人里の近くまできたとき。
「ウナギのうまい店がある」という人間たちの声を耳にします。
食べたい気持ちをおさえられないモグは、アオメに「人間の町には、ぜったいに近づくな」「“ぜったいぜつめい”でなきゃ、化けるな」と言われていたのに……、人間に化けて、町に入り込んでしまうのです。
一見じょうずに化けたものの、うつしだされる影はかわうそのまま……。
さあ、モグはウナギを食べられるのでしょうか?
小森香折さんが綴る、かわうそのきょうだいのやりとりと、江戸時代の山間の宿場町あたりの情景が、すーっと心に入っていきます。
むかしばなしのような起承転結がはっきりしたおもしろさがたまりません。
人気絵本作家、長谷川義史さんが絵を描いていますが、モグも、モグが化けた女の子も、目のつややかさや、尻尾と髪のくろぐろしたなめらかさが生き生きして印象的です。
後半、まさに“ぜったいぜつめい”に陥ったモグの場面は迫力満点!
おはなしと絵にドキドキ、読み聞かせも盛り上がります。
最後はしあわせな余韻が残る、読後感。
なんだかんだ言って、きょうだいはたのもしいものです。
幅広い年齢の子どもたちが楽しめますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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