人気作家のマクリントックがイソップ寓話を手がけたら?
劇場風の舞台に立つ、クラシカルな衣装に身を包んだ動物たちの挨拶から始まります。
「まずは、登場する動物たちをご紹介しましょう・・・」
すでに何かを企んでいるような表情のキツネ、びくびくしているヒツジ、恭しくおじぎをしているネコやカラスたち。
舞台袖にも大勢の犬やクジャクが顔だけのぞかせています。
ああ、何だかこの始まりだけでワクワクしてきますね。どんなお話を聞かせてくれるのでしょう。
イソップ寓話と言えば、短い中にドキッとするような教訓が含まれているお話が多いことも特徴の一つですよね。一場面でビシっと決めてくれるイソップもいいのですが、この絵本はマクリントックが子どもたちに向けて選んだ9話を何場面かに分けてわかりやすく再話してくれています。
例えば浅いお皿と壺のようなお皿でスープを飲む場面が有名な「キツネとツル」では、ツルがキツネの家に招かれる様子から、ツルをからかおうと浅いお皿のスープを運ぶキツネの様子、その後の二人のやりとり、ツルが仕返しをするオチまで、たくさんの場面に分けて絵を見せてくれています。キツネのすましたポーズや意地悪な表情、ツルの怒っている顔などくるくる変わる二人の感情を見ていると、よく知っているお話のつもりでも、また新しい面白さを見つけられたようで新鮮です。
他にも迫力のあるオオカミやちょっとすましたネコ、背伸びして格好付けるカラスなど、表情豊かに、時にはユーモラスにイソップの魅力を伝えてくれます。もちろん細かい所まで描かれている美しい衣装や部屋、小物なども大きなみどころのひとつ。とても贅沢なのです。
おしまいの場面で見せるのは・・・動物たちのお面をはずした子どもたち!
大人でも身につまされちゃうような内容のお話を、子どもたちが快活に演じちゃうっていう設定がいいですよね。
「キツネとカラス」「キツネとツル」「町のネズミといなかのネズミ」「オオカミとツル」「キツネとネコ」「オオカミと子ヒツジ」「カラスとクジャク」「キツネとブドウ」「オオカミと犬」の9話。子どもがじっくり味わえるイソップ絵本の新定番の登場です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む