青い大きな体に三つ目の怪物と、頬を上気させた負けん気の強そうな男の子がにらみ合う表紙。ひと目でハッと惹きつけられる力強さがあります。
このお話は、勇敢な少年ゴナンが、恐ろしい怪物マンガスに立ち向かうモンゴルの昔話。
草原の村でおじいさんおばあさんと暮らすゴナンの村を、あるとき恐ろしい怪物マンガスが襲います。みんなの大切な宝物や馬や羊を奪っていったのです。
マンガスを倒すため、白い馬に乗って村を発つゴナン。荒れ狂う赤い「じごく海」を飛び越え、骨が突き刺さる「がいこつ山」を切り開き、マンガスの住みかへたどり着くと、ゴナンはマンガスに勝負を挑みます・・・!
「マンガスはモンゴルの昔話によく出てくる怪物で、山のように大きなからだにたくさんの頭をもつとされ、家や財産をうばいとって人々を苦しめます。(中略)干ばつや雪害など人びとの暮らしをおびやかす自然災害を、マンガスという姿にして語ってきたのでしょう。このお話は現代のモンゴルの子どもたちにもよく知られており、子どもながらに勇敢で力強いゴナンは、遊牧民の理想の姿として語り継がれています。」
(ガンバートルさんのあとがきより)
大陸の大地が生んだこの壮大な物語を初めて絵本にしたのは、日本在住のモンゴル人作家イチンノロブ・ガンバートルさんと、画家のバーサンスレン・ボロルマーさん。
モンゴルの児童書や教科書の挿し絵を多数手がけてきたボロルマーさんの描く遊牧民の住居ゲルや民族衣装は、細やかで優しく、エキゾチックな魅力に溢れています。
一方でマンガスとゴナンの対決のシーンは、迫力いっぱい!特に二人が競う相撲のシーンは圧巻です。
山のように大きなマンガスは、「すもうは、どうせ、わしのかちだからな。」と言います。ところが、マンガスの予想通りにはいきません。なぜってゴナンは相撲の名人なんですから。ずっしーん!どっしーん!両者は互角にぶつかりあい、三日三晩相撲を取り続けます。日本の相撲と違って土俵がなく、決着がつくまで戦い続けるモンゴル相撲。近年日本の相撲で活躍するモンゴル人力士の強さの秘密も垣間見えるようですね。
表情豊かで元気いっぱいの小さな英雄ゴナンと、恐ろしいけれど愛嬌のあるマンガスの大勝負。きっと日本の子どもたちも、初めて知る異国の昔話に夢中で聞き入ってしまうにちがいありません。
(絵本ナビ編集部)
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