チェコの不思議な創作民話「あなのはなし」。どう不思議なのかと言いますと、まず主人公が「あな」なんです。
この「あな」はもともと靴下に空いた小さな穴でした。あなは誰にもつくろってもらえなかったので、どんどん大きくなって、ついには靴下をのみこんでしまいます。そうして、独立?したあなは、なんと、旅に出るのです。
ころころ転がるドーナツやカエル、ツバメにひつじ、旅の仲間も増えて、奇妙な道中は仲良く進んでいくのですが・・・、いつのまにか旅の一団を食べてやろうと、オオカミがついてきています。無防備この上ない寝込みを襲おうとするオオカミ。・・・危ない!どうなる、あなたち!
この絵本がユニークなのは、あなが、実際にページの穴になっているところ。つまり、穴あきのしかけ絵本なのです。
ナンセンスな物語を楽しい絵と穴!にしているのは、「もっとおおきなたいほうを」(福音館)の二見正直さん。表紙の記載も、「二見正直 え・あな」となっています。
コマ割りされた画面の中に、穴があまりに自然に存在するのが、不思議やら面白いやら!
絵本の中の、手足が生えたおかしなあなを見ていると、どんどん愛着がわいてきます。ページに空いた穴なのに!そしてその穴はずっとそのままの形ではありませんよ。どう変化するかはお楽しみ。
あなを指でなぞりながら、この暢気で愛すべきナンセンスの物語をのんびり楽しんでくださいね。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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