日本ではあまり馴染みがないけれど、ドイツの伝統的な美味しいパン、プレッツェル。なんといっても、あの不思議なくるくるの形が気になりますよね。どうしてこんなパンが誕生したのでしょう。
その由来を絵本にしてくれたのが世界的な絵本作家エリック・カールです。
お日様にかざしたこんがり焼き色のついたプレッツェルの美味しそうなこと!!
昔々、お城を囲む小さな国のすみっこにパン屋さんがありました。
そこでパンを毎朝つくっているのが、国じゅうで、町じゅうで、一番腕のいいパン職人のウォルターです。
パン屋はいつもお客さんでにぎわっていたけれど、一番のお客さんはお城の女王さまと王さま。毎朝、お城まで届けていました。
ところがある日、ロールパンに入れる牛乳をこぼしてしまった!
仕方なく、水を入れてパンを作ったウォルターでしたが…口の肥えている女王さま、そして王さまには通じなかった。怒った王さまがウォルターにつきつけた難題は、
「あさひが三つさしてくるパンをつくるのだ。」
期限は明日の朝。さて、ウォルターは無事に新しいパンを発明できるのでしょうか。
エリック・カールがなぜプレッツェルのお話を?でも、こんなエピソードを聞いて納得です。
彼は、生まれはニューヨークだけれどドイツ育ち。そして腕のいいパン職人だったおじさんがいたのだそう。その名も「ウォルター」、やっぱり町一番の人気のパン屋さん。いいかおりにつつまれながら、よくパン屋の仕事を見学していたそうですよ。おじさんはいつも一生懸命働いていて、お店ではおくさんがいつも大忙し。そんな記憶から、この絵本には尊敬や感謝の思いもこもっているのかもしれませんね。
「プレッツェル」という言葉の由来には色々な説があるみたいですが、にぎやかで、色鮮やかで、かおりまで伝わってきそうなこの絵本で堪能することをおすすめします。エリック・カール1972年の作品を今回初邦訳された「食の傑作絵本」です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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