狛犬のかわりに、カラスの石像をもつ白烏(しろがらす)神社。
パワー・スポットとしてひそかに人気がありながらも、古くから「三つのなぞ」が伝えられている。
1つ目は片方しかいないカラスの石像、2つ目は、拝殿の天井に描かれた幼児の落書きのような絵、3つ目は、石の台座に立てられている、不思議な力を持つといわれている星明石(ほしあかりのいし)。
この白烏神社の長である佐一郎の孫、小学5年生の藤堂千里は、毎年行われる伝統行事の子ども神楽で重要な役である剣士を務めている。しかしメンバー不足で子ども神楽の存続が危ぶまれ、神楽を踊った日の夜、千里を含むクラスメイト6人が新たな踊り手となるよう告げられる。選ばれたのは、千里のいとこの藤堂星司、親友の筒井美音、クラスのボス的存在の北川礼生、大人しいが並外れた頭脳をもつ三上数斗、クールできつい性格の岡崎有沙。まったくバラバラの個性を持つ6人はさまざまぶつかりあう。そこにさらに、周りで不思議な出来事が起こりはじめて…。いったいなにがおこっている?
設定が現代で、登場人物も自分の身近にいる誰かとそう変わらない友達や親戚たち。お話を読んだ子ども達は、不思議な出来事が遠くはなれたどこかのお話ではなく、今いる日常からなにかが始まるかもしれないというワクワク感に包まれるのではないでしょうか。神社という古代から伝わる日本の神を祭った神聖な場所が舞台になっているところも何かが起きそうな予感に満ちていて、ページをめくりながら期待が高まります。
作者は、『一瞬の風になれ』『サマータイム』などリアルな少年少女の日々や心情を描く作家として知られる佐藤多佳子さん。この巻でも、人物の外見の描写や、内面の心の動き、それぞれの関係性などが丁寧に描かれ、生き生きとした子ども達の姿が大きな魅力です。10月に2巻、11月に3巻が発売、以降も4巻、5巻とまだまだ続くという「シロガラス」シリーズ。1巻で見え隠れする謎がどんな大きな謎につながっていくのか、どう解明されるのか、続きが楽しみです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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