現在も続く2つのお店。東京・豪徳寺の靴屋さんと、新潟・長岡市の鉄屋さんの、戦争中の生活や苦労を絵本で紹介しています。物不足の中での生活について解説をした資料ページもあるので、調べ学習にも活用できます。
戦争体験者の語りを絵本で紹介しているシリーズの第1巻です。
この巻は戦時中の日常生活にスポットをあてて説明がなされています。
2編の話が載っているのですが、それぞれ徴収されて戦争に行った人が無事に帰ってきた話でホッとしました。
そのおかげで戦後も商売を続けることができて現在に至っているという話。
どうしても戦争というと悪い結末ばかりが先立ってしまうのですが、当たり前に生活できることがいかに大切かということを感じさせてくれます。
第1話
「家族をつないだお父さんのくつ」 光丘真理:文 / おぼまこと:絵
靴屋を営んでいるお父さんは32歳なので戦争に行かなくて済むと思っていたら、召集令状は若者から次第に年齢が上げられて兵隊に行くことになりました。
靴屋という商売、人のために苦をいとわず軍事工場で働くようになっても近所の人の靴を修理したエピソード、子どもが発熱して入院しているのを気にしつつ兵隊に行ったエピソード、現実の話であるだけにひしひしと伝わってきます。
人に助けられたこと、お父さんが無事に帰ってきてまた靴屋を始めることができたこと、
靴屋さんが今も続いていること。
自分のことのようにホッとさせられました。
絵をおぼまことさんが描いています。
『ひでちゃんとよばないで』、『伸ちゃんのさんりんしゃ』と相通ずるお話。おぼさんがシリーズ第1巻の第一話で描いていることに、このシリーズの意気込みを感じました。
第2話
「あいちゃんのおじやごはん」 すとうあさえ:文 / 藤本四郎:絵
あいちゃんの家は多くの人が住み込みで働いている鉄屋さん(金属製品を売っています)。朝の食事の漬物でおじやご飯をかきこむ音がとても印象に残っています。
戦争で職人が次々と兵隊さんになって去っていきます。その中で一番印象深いのはリーダー格のくにおさん。
いろいろな思い出が描かれていますが、その中で印象に残るのはザラメで飴を作ってくれた話。
そのくにおさんを戦争に送る送別のために炊いてあげたご飯(当時、お米はとても貴重だったことが解ります)。
そのくにおさんとは無事に再開できて、現在に至っているというホッとするお話でした。
絵を描いているのは藤本四郎さん。
藤本さんにも戦争にまつわる絵本が何点かあります。清楚な絵でじんわりと訴える物があります。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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