きらきらと輝く瞳。まばゆいばかりの少女を描く、少女画の巨匠、高橋真琴さん。
本作は『ペローとグリムのおひめさま シンデレラ』『アンデルセンのおひめさま にんぎょひめ』に続く復刊絵本シリーズの3作目です。
古くから日本で親しまれてきた「かぐやひめ」「はちかつぎひめ」「おりひめ」3つのお話がまとめられています。
1970年代、雑誌「よいこ」「たのしい幼稚園」に掲載された絵をもとに、あらたな描き下ろし作品(!)を加え、読み聞かせ絵本として再構成されたものです。
1934年生まれ、少女漫画家・少女画家として活躍され、60年代から80年代頃にかけて一世を風靡した高橋真琴さんが男性であることは、意外と知られていません。
そして今なお画の美しさは変わらず、70年代に描かれた作品と現在のものを並べても、まったく違和感がありません。
わが家の5歳の娘に読み聞かせてみると、「おりひめ」は七夕のときに聞いたことある!という反応でしたが、「かぐやひめ」「はちかつぎひめ」は初耳という顔でした。
「かぐやひめ」に登場する5つの宝物「蓬莱山の枝」「火鼠(中国の伝説上の動物)の皮衣」「竜の光る珠」など、ちょっとむずしい名前も、そのまま、ひらがなでお話のなかに盛り込まれ、欄外に注釈がついています。
ひらがな主体で書かれた文章は、シンプルでありつつも、日本語らしい表現がもりこまれています。
見どころは、まばゆいばかりのお姫様だけではありません。
古式ゆかしい装束、屏風、ふすま絵など、古来の美意識が詰め込まれた少女画は圧巻の一言。
「かぐやひめ」の月夜のシーンにはオミナエシ、尾花、萩、桔梗、撫子、葛など秋の草花が楚々と花ざかり。
春には梅、桜。松の枝ぶりも美しく、まさに和風ロマンチックの粋を極めたお姫様絵本です。
意外と今の子どもたちには、新鮮な世界だったりして・・・?
もしかしたら、おばあちゃんおじいちゃんにもご一緒に楽しんでいただけるかもしれませんよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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