「ばあさん みてみろ このおいも。ことしのいもは さいこうじゃ」
おじいさんが大切に育て、畑で立派に大きくなったと喜んでいたさつまいもが、盗まれてしまいました。
夜の間にだれかがこっそり盗みにくるのです。
畑にかかしをたてても、わなをしかけても、落とし穴をつくっても。
おいもはどんどん減っていきます。
いもどろぼうはいったい誰!?
前半まではなぞかけが楽しい展開ですが、後半、にわかに深い話になっていきます。
丹精込めて畑を耕し、おいもに水をやった、おじいさん。
では、おいもが育つための地面、雨、太陽は、いったいだれのおかげでしょう。
キツネ、サル、シカ、ノネズミ、モグラ、ウリボウ、イノシシが言います。
「いもは つちの なかで じぶんで そだったんじゃ ないのけ?」
「そう、あめ ふって たいよう あびて そだったはずや」
「それとも あめや たいようも にんげんが つくったって いうのけ?」
どろぼうは誰なのか。ひとりじめしているのは誰なのか。
作者のきむらゆういちさんは『あらしのよるに』などで人気の作家さん。数々のロングセラーが子どもの心をつかんでいます。
絵は、こちらも多くの絵本作品を描いてきた田島征彦さん。土の生命力あふれるダイナミックな絵、縦開きの画面もあり、勢いとすごみを感じます。
人間中心の世界に、投じられた一石。
どっちがどろぼう? 誰がどろぼう?
作者お二人のユーモアとやさしさがにじむ力強い作品です。
おじいさんにたいして決してゆずらない動物たちの生き生きした姿と、おじいさんの表情の変化にもご注目くださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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