あるところに住んでいた貧しいこなひきと、3人の息子。
こなひきが死んだ後、3人の息子たちはそれぞれ、お父さんが遺したものをもらうことになりました。
一番上の息子は粉引き場、二番目の息子はろば。
そして末っ子がもらったものは・・・たった一匹のねこ。
「ねこ1ぴきもらったって、なんのやくにもたたないよ」
がっかりする末っ子に、このねこは言います。
「ごしゅじんさま。ながぐつを1そくとふくろを一つくださいな。きっとおやくにたってみせます。」
ためしに末っ子が長靴と袋を渡してみると・・・ねこは次から次へと思いもかけない快進撃をみせてゆくのです!
一度は出会ったことがあるでしょうか、ペロー童話の名作「長靴をはいたねこ」。
あまりにも有名なこの作品を、児童文学者の末吉暁子さんと絵本作家飯野和好さんがタッグを組み、これまでにない新たな世界観を作りあげてくれました。
袋でしとめた一匹のうさぎを使って王様に末っ子の存在を知らしめ、一方では正体を知る人々を強気に巧みに言いくるめていくねこ。
そのたくましい行動力に驚くばかりですが、なんといっても胸がすくシーンは、普通のねこなら恐ろしくてひるんでしまう人食い鬼との知恵比べ。
いとも簡単にお城まで奪ってしまうんですからたまりません!
テンポよく進むおはなしの展開は、ネコの機転の速さと貧しかった主人の地位をみるみるのし上げていくサクセスストーリーを、いっそう愉快痛快に楽しませてくれます。
そして独特で味わいある表情の登場人物たちと、大胆で迫力あるタッチと構図で描かれた飯野さんの童話の世界が、この作品の余韻をより深く刻んでくれます。
ラストシーンに登場するねこ、その立ち姿の勇ましいこと、凛々しいこと。
思わず惚れ惚れしちゃうかっこよさですから!
世界多くの作家の手により絵本や童話、映像作品となって愛され続ける「長靴をはいたねこ」。
ねこの不敵な微笑みがえも言われぬ魅力のこの一冊も、きっと子どもたちの心に残る名作となることでしょう。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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