舞台は旅まわりのサーカス団。そこで下働きをする少年アーメッドにはお父さんもお母さんもいません。サーカスの団長のサリームばあさんにいつもこき使われ、働きづめの毎日を送っていました。
そんなある冬の日、アーメッドが森でたきぎを集めていて見つけたのは、金色の大きなたまご。
いったいなんのたまごなのでしょう?
春になり、たまごは内側からコツコツと音を立てます。殻をやぶって中から出てきたのは…
なんと、小さな女の子!
羽根のようにやわらかい髪を持ち、目がキラキラして、小鳥のような歌をうたうのです。
オーレリアと名付けられた彼女は、やがてどんどん美しくなっていき、背中から羽根がはえてきました。
サリームばあさんは、見世物になるオーレリアをかごに閉じ込めて、ほくそえみます。
だんだん元気のなくなっていく彼女の様子にアーメッドはある決心をするのでした…。
作者はイギリスの人気絵本作家ジェーン・レイ。
コラージュの技法を用いて描かれた、エキゾチックな模様の衣装やテント布などがサーカス団の不思議な雰囲気を演出します。そして少年を始め、登場人物たちの黒い瞳の強さも印象的。更にたまごから生まれてきた少女オーレリアの人間を超越している美しさ…。それらがこの幻想的な物語を盛り上げていきます。
つらい仕打ちをうける少年と自由を得て鳥になった少女。
二人が飛び立つ最後の素晴らしい場面を見ながら、その輝きに思わずため息が出てしまいます。
作者は鳥となった少女オーレリアに何を託しているのでしょう。そして、読者は夜空の先のはるか彼方に何を見るのでしょう。絵本の中に飛び込んで、思う存分そのきらめく幻想世界を体験してみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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