森の中に住む森こびとの男の子、二ムの物語。
大きな森に住む森こびとには、みなそれぞれ役割があるのです。
二ムの仕事は、おじいさんから受け継いだ「森で迷っている人間を助ける」という重要なもの。
森を偵察している小鳥さんから「早朝から森に人間が入ってきている」との情報を聞き、切り株の部屋に戻るや否や仕事道具の手入れをはじめます。おじいさんから譲り受けた3つの仕事道具は、どれも、この仕事には欠かせない重要な道具たち。一つずつ丁寧に手入れをしてリュックにいれます。
しんと静まりかえっている森の中にいると、どこからともなく「たすけて」という人間の男の子の声が・・・。早速、二ムは小さな体を機敏に動かして、颯爽と男の子のもとへ向かうのですが・・・。
森の中で生い茂る木々、その木にびっしりと生えたコケの質感や光る朝露、朝陽を浴びて活動はじめる森の植物や生き物たちの生き生きとした様子。森の薫りまでもが匂い立つような美しい描写とその中で生命力溢れる森こびとたちの暮らしを描かれたのは、絵本作家の勝山千帆さんです。
切り株の中にある居心地の良い二ムの部屋に描かれている生活感あふれるその暮らしぶりは、決して非現実的な幻想のものではなく、私たち人間と同じように森の中で生活しているんだと感じさせてくれます。人間の目に見えないものたちがたくさん暮らしている山奥で、ひっそりと「森こびと」たちが今日も自分たちの仕事に精を出しているのかもしれませんね。
二ムの道具の効果やハッカの葉の入ったお茶や仲間からもらう山ぶどうのパンなど、美味しそうな森の生活もみどころです!
(富田直美 絵本ナビ編集部)
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