トゲを持つサボテンの子が「ぎゅっとしてほしい」!?
せつないタイトルにひかれて絵本を開くと…
そこは、いろんな姿のサボテンたちの住むお屋敷です。
相手に近づくのは何より失礼なこと、それがサボテンたちのマナーでした。
だから、幼いサボテンのサボタは、みなからこう教わります。
「くっつかないで」
「きれいな花を咲かせなさい」
「りっぱなサボテンになりなさい」
ところが、サボタが望んでいたのは、りっぱになることより、ぎゅっとだきしめてもらうこと。
そんなサボタはサボテンたちに理解されず、心はさみしくなるばかり。サボタは、思いきって一人で暮らし始めました。
ところがある日、サボタの耳に、さびしげな泣き声が聴こえてきて…。
この心をゆさぶられる物語をつくられたのは、イギリスで活躍中の作家シモーナ・チラオロさん。サボタがかわいそう…これからどうなるの? と先が気になる展開ですが、イラストにはユーモアがあふれていて、子どもたちも安心して楽しむことができそうです。サボテンたちが読んでいるサボテン新聞や、サボタの一人暮らしの様子(デリバリーを頼んでいる!)、住まいに掲げた立て看板などに、思わずくすりと笑ってしまいますよ。イラストは、水彩パステル調のやさしいタッチで、グリーンやアースカラーにしぼった色合いなのも、個性的でおしゃれです。かわいいサボタの動きや表情、ぜひじっくりお楽しみくださいね。
サボタのけなげな姿に、心がぎゅっとなり、ラストでほっとあたたまります。ロマンチックな愛の寓話としても読めるかもしれません! 子どもたちはもちろん、おとなにもオススメしたい一冊です。
(長安さほ 編集者・ライター)
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