モンゴルの楽器・馬頭琴。その名前の通り、先端部分が馬の形をしているとても美しいフォルムをした擦弦楽器です。実は馬頭琴が馬の形をしているのには、モンゴル民話として40年以上愛されているとても哀しい話があるのです。
昔、モンゴルの草原にスーフという貧しい羊飼いの少年がいました。スーフはおばあさんと二人で暮し、とてもよく働きました。
ある日、スーフが生まれたばかりの白い子馬を連れて帰ってきます。スーフの一生懸命な世話を受けて、子馬は雪のように白い美しい馬になっていきました。
ある年、この国の王さまが競馬大会をすることになりました。一等になったものを、娘と結婚させるというのです。スーフは白い馬と参加し、見事優勝をします。ところが王さまは約束を守らないどころか、白い馬を奪った上に殺してしまうのです!
ひどい仕打ちを受け、傷つき悲しみに沈むスーフの夢にあらわれたのは・・・。
不条理な権利を振りかざす王さま、理由もなく傷つけられてしまう白い馬、そしてスーフと馬のお互いを想いあう気持ち、全てを受け入れたスーフの表情。
このお話は読んでいるだけで、心の内にある様々な感情を呼び起こさせます。
怒りや哀しみ、切なさ・・・それらを体験した上で見る白く美しい馬頭琴。子どもたちはこの絵からはどんな音を聞きとるのでしょう。
激しくも切ないこのお話を手がけたのは、子どもたちに大人気の絵本作家いもとようこさん。魂を込めて描き出された物語、じっくりと味わってみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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