たいくつなきつねが、あくびをしかけて……
「ひーっ」とびっくり、やぶに飛び込んだ。
なぜならヒキガエルがいきなりサボテンに化けたから!
そしてサボテンは、たちまちタヌキに。
このタヌキ、ふるえるきつねにはおかまいなしで、独り言を言い始めます。
「おれは、まことに タヌキであろうか。
タヌキにしては すこし かしこすぎるところが、ある」
……もうこの一言で参ってしまいませんか? なんと含蓄の深いこと。
いや、「かしこすぎる」かどうかはわかりませんが、
「おれは、まことにタヌキであろうか」
という悩みには、なんだか共感してしまいます。
きつねもぷっとふきだしかけますが、すぐに真顔になります。
高畑那生さんが描く、腕組みするタヌキの悩み顔といったら。
ますますタヌキがりっぱに見えてきます。
だってこのタヌキ、前は大会社の社長だっただの、ジャンボ機のパイロットだったのと言い出すんです……。
内田太郎さんのナンセンス哲学絵本。
タヌキがうたう歌や一心にとなえる呪文(?)もすごい迫力と浮遊感です。
本当に、じつはタヌキじゃないんじゃないの?
心のどこかを射抜かれた、へんな感覚がじわじわと湧いてきます。
読んで「たまたま、わたし」の「ほんとうのじぶん」を想像してみるのもわるくないです。
もちろん、りっぱなものとは限りませんよ!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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