日本・中国・韓国の絵本作家が手をつなぎ、子どもたちにおくる平和絵本シリーズ。
それぞれの作家がご自身の戦争の体験と真摯に向き合い、自分の国が行ってきた事実と向き合い、
未来の子どもたちに向けて作品を残していきます。
田畑精一さんは、時も国も越えて、はっきりと断言します。
「ぼくは 人を殺すのも、殺されるのも、大きらいです。」
桜の花咲く3月に生まれたぼく。ぼくは何にも知らなかった。その年に侵略戦争が始まり、朝鮮を植民地にしていたことを。やがて桜の花の下で小学校の入学式を迎えたぼく。教科書も授業も新聞もラジオも戦争の色にぬりかえられ、桜の花は軍歌になって町じゅうにあふれた。
「桜の花のように、美しく、ちれ、ちれ!」
ぼくも本気で国のために死のうと思ってたんだ…。
しかし、戦争は終わり、桜も燃え、5人もの子どもを残し父が亡くなり、祖母が亡くなり。もっと多くの人が亡くなり、悲惨な生活の中でぼくにとうとう一つの疑問がうかんだ。
「戦争って、いったい なんなんだ!」
私たちも戦争がおそろしいものだという事は知っているつもりです。でも、本当におそろしいのは子どもたちが何も疑うこともなく、頭の中までも戦争に犯されていくということかもしれません。自分たちの国がたくさんの人たちを殺してきたこと、何も知らずに戦争を加担しようとしていたこと、結果的に大勢の人たちが亡くなり悲惨な結果しか残らなかったこと…それらを知っている今、心に傷を負っている人たちがたくさんいるということです。戦争の残した傷は深すぎます。
やがて大人になったぼくに、桜の老木が語りかけた言葉とは…?
田畑さんが、時に美しく時に激しく描いた「桜とぼく」の物語。
子どもたちと一緒に読んでみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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