今もなお、私たちに生きる喜びや勇気を与え続けてくれる「アンパンマン」。
その生みの親であるやなせたかしさんが2013年10月に天寿を全うされました。この絵本は、2013年から出版されている「やなせたかしメルヘン図書館」シリーズで、1970年代からこれまで描いてきた貴重な名作絵本の復刊なのです。
大草原を見下ろすのっぽで大きな「すぎのき」とその足元にちょこんと咲いている「のぎくのはな」の愛の物語。
「すき すき すぎのき
すぎのきが すきよ。」
小さな自分に気づくはずがないと思う「のぎく」は、風に揺れながら小声で歌います。「すぎのき」もそんなけなげで可愛らしい「のぎく」のことがすきでした。二人はお互いを思い、とても幸せな気持ちでじっと寄り添っていました。ところが、そんな二人を引き裂く事件が起きてしまうのです。
お互いをひっそりと慕っていた心の優しい二人に一体何が起きたのでしょうか。そして二人の「愛」はどうなったのでしょう。結末には素敵な驚きが待っています。
元気な「アンパンマン」のイメージからは想像もつかない繊細で抱きしめたくなるような優しいタッチの絵に驚かれる方もたくさんいるかもしれませんね。特に、大切な「のぎく」を守るために命をも惜しまない勇敢な「すぎのき」のたくましさと、「すぎのき」を思い続ける可愛い「のぎく」のひたむきさといったら・・・。『タコラのピアノ』『あかいぼうし』『ラーメンてんし』など、やなせさんの優しさあふれるユーモアとピリッと辛口の絵本。シリーズを通して、知らなかったやなせたかしさんの懐かしくも新しいメルヘンの世界をご堪能ください。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
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