トムさんは、おもしろいおじいさん。ティモシーとサラが小さい頃、お隣にすんでいた人でもあります。
トムさんが隠した宝の地図を、ティモシーとサラは、遊んでいて見つけだしたことがありました。
年をとって、体が自由に動かなくなってきたトムさんは、リックにたのみたいことがあると言い出しました。
庭のすみの小屋に、壁いっぱいの棚をつくってほしいというのです。
じぶんの本をならべたちいさな図書館をつくり、村の人たちがだれでも読めるようにしたいと。
大工仕事の得意なリックがさっそくとりかかり、何日もかかって、大きい本や小さい本、高さのちがうたくさんの本がぴったり入る、棚をつくりあげました。
トムさんは満足そう。1冊1冊、思い出をふりかえるように、たいせつに本を並べていきます。
「わたしのすきだった本たち。こんどは、みんながよんでくれるよ。」
そして日曜日。トムさんの図書館をおとずれた村のみんなは、わあ、すてきな図書館ができたねえ、とうれしそう。
帰り道にフローラさんが「わたしもまねしてみようかしら」と言い出して……。
シリーズ誕生から25年以上。ティモシーとサラが主人公の絵本シリーズに、3年ぶりにあらたなお話が加わりました。
本を愛する気持ちをわかちあいたいトムさんの願いが、ひかりのように心にさしこみ、何だかしあわせなきもちにしてくれます。それはまわりの人たちにもつたわり、ひろがっていくようです。
最後にトムさんが、お見舞いにきたこねずみたちに、ベッドのなかから贈る言葉が、素敵です。
『ティモシーとサラとたからのちず』を読めば、トムさんが隠した地図のことがわかります。
『ティモシーとサラときのおうち』ではリックがどんなふうに大工仕事が上手なのかや、植物いっぱいの家にすむフローラさんの様子がわかります。
シリーズのほかの本をあわせて読むと、登場人物のエピソードがどんどん深まり、楽しみが広がりますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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