3百年前から山のてっぺんに立つ、あかい実の木。
そのあいだ、たくさんのきょうりゅうたちが、
あかい実をおいしそうに食べていった。
木は、そんなきょうりゅうたちの姿を見るのが、幸せだった。
ある日のこと……。
山の一方の斜面から、腹ぺこのゴルゴサウルスが、山を登ってきた。
反対側からは、おなじく腹ぺこのティラノサウルスが。
エサになるきょうりゅうはいないかと登ってきたふたりは、
あてが外れ、あかい実の木の前でけんかをはじめた。
バッシーン バッシーン ガブリッ。
しっぽでなぐりあい、かみつきあい、ふらふらになるまで大げんか。
しかしそのとき、となりの山で大噴火がおこり
きづいたときには、高い山のてっぺんの木のそばに
ふたりだけがとりのこされてしまっていた……。
おりられない絶壁を前に、みるみるやせていく
ゴルゴサウルスとティラノサウルス。
あかい実がたべられることがわかってからは、
互いに、食べる実の数を決めたり、わけあったり。
そんななかでゴルゴサウルスがケツァルコアトルスに襲われ
ティラノサウルスが落っこちそうになり
つぎつぎ、試練がおそいかかります。
助け合うふたりをじーっと見ていたあかい実の木。
そしてついに、いままでにない、ものすごい嵐がやってきて……。
『おまえうまそうだな』にはじまる、大人気の「ティラノサウルス」シリーズ13冊目。
肉食のきょうりゅう同士、わかりあえないと思っていたふたりが、
お互いしかいない環境になったとき、
ゆずりあい、助けあい、いっしょに生きのびようとします。
宮西達也さんファンにはおなじみ、ほろりとくるエピソードがいっぱい。
心が行動をきめること、だれかをおもいやる気持ちが大きな力になることを
あらためておしえてくれる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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