仲間たちといっしょに、心穏やかに暮らしていたカピバラのジョンくん。
ある日、旅するおサルさんから、とある食べ物の話を聞きます。
それは、白くて、赤くて、黄色くて、だれかと分け合って食べると、もっとしあわせになれちゃう、「夢のような食べ物」!
おサルさんの話が忘れられず、いてもたってもいられなくなったジョンくんは叫びます。
「ああ、たべてみたい!」
そして、「夢のような食べ物」を探すために村をとびだしました――
細い目、のっぺりとした体、のんびりとのどかな雰囲気。
自然が作り出した生まれながらのゆるキャラ、カピバラ!
カモとたわむれ、お昼寝し、リンゴをもいで、お茶を飲む。
作者はMOE絵本屋さん大賞新人賞第1位『かもめたくはいびん』のいしいひろしさん。
せせこましい気持ちなどみるみる溶けてゆくようなカピバラ村のようすに、いしいさんのカピバラ愛を感じます……
道中に出会い、いっしょに「夢のような食べ物」を探すこととなる旅の友、ワニさん、そしてジャガーさん。
いったいどうしてそんな、いかにも強そうな肉食獣と……
あまりにデコボコすぎるトリオに、ちょっとハラハラ、でもかわいい!
ウサギさんのことを「夢のような食べ物」だとかんちがいして、ワニさんやジャガーさんといっしょにウサギさんのことを不穏に見つめる、ジョンくん。あれ?カビバラって、肉食獣だったっけ?
また、「夢のような食べ物」を口にしたみんなの、とろけそうなその笑顔のしあわせそうなこと!
動物たちの見せる豊かな表情が、とってもかわいくてゆかいな一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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