絵本をひらいてまず目に飛びこんでくる、大きな家。これがマリアの家です。
そして右端の植え込みのなかに、よくよく目をこらさないとわからないほどの、小さな扉がもうひとつあります。
マリアと、マリアの家に住むねずみ一家の女の子、ネズネズ。
ふたりは、同じ家に住む、ないしょのおともだちなのです。
このお話は、ある夜にマリアのママと、ネズネズのママが、同時にいなくなってしまった!?というお話です。
大きな家のなかのふたつの空間・・・マリアが暮らす空間と、ネズネズが暮らす小さな空間、それぞれでお話はすすんでいきます。
家族構成も似ていて、行動も同じ。たとえばマリアがパジャマにきがえ、歯をみがき、髪をとかして「ママ!」と呼ぶとき、ちょうどネズネズもねまきにきがえ、歯をみがき、ひげをとかして「マーマー!」と叫ぶんです。
ママの返事はなく「ママ、どこにいるの?」「ねえ、ママみなかった?」と家じゅう探して歩くふたり。
マリアとネズネズの行動はべつべつなのにそっくりなので、読者はふたりがいつ出会うのかとわくわく・・・。
さて、ふたりのママは見つかるのでしょうか?
バーバラ・マクリントックが描く精緻な絵は、すみずみまで遊び心にあふれ、ねずみ一家の壁を飾るボタンや片方だけのピアス、瓶のキャップで作られたいす、マッチ箱のベビーベッドなど、いつまで見ても飽きません。
じつはこの絵本、マリアとネズネズのママが、小さな娘だった頃のお話『ないしょのおともだち』の続編なのです。本書1冊でもじゅうぶん楽しめますが、ママたちの小さい頃を知りたくなったら、ぜひあわせて読んでみてくださいね。(冒頭の「大きな家」は、もしかしたら前作にも登場する家を、反対側から描いているのでしょうか!?)
大きな家のなかに描きこまれたもうひとつの空間。もうひとつの家族。
2世代つづく友情に、想像はひろがり、なんだかしあわせ、贅沢なきもちになる大型絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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