「はいもしもし。こちら きょうりゅうかぶしきがいしゃ です。」
受付のお姉さんが電話を受けると、背中に大きな帆を持つ恐竜、スピノサウルスが出動し、川をさかのぼって屋形船を助けに行きます。スピノサウルスと屋形船の向こうには、東京スカイツリーやアサヒビール本社ビルが見えます。
この会社、「恐竜株式会社」では多くの恐竜が飼われていて、受付に相談事が舞い込むとその内容に合わせた恐竜が出動するのです。大きな体を活かして百貨店の催し物の宣伝、足の速さを活かして緊急輸送便、ビルの解体現場や建設現場でも大活躍です。実はこの受付のお姉さんにも秘密があるのですが・・・そこは読んでのお楽しみです。
ひとつひとつの場面がとてもよくできていて面白いのですが、この絵本にはもう少し深い狙いがあります。私たちが生活している現代の街に恐竜が出てくることで、恐竜たちがどのくらいの大きさに見えるものなのかが建物や車との比較で分かります。恐竜たちに仕事をしてもらうことで、その恐竜にどんな能力があるのかがわかります。さらに、会社で恐竜を飼っておくとしたらどんな食べ物が必要かを知ります。こうして、これまで遠い昔の世界にいた恐竜をもっと身近に知ることができて、その魅力をもっと感じることができるのです。
本の後半には、「恐竜が現代に生きていたら・・・」として、絵本の各場面の解説が掲載されています。登場する恐竜の名前と説明、その恐竜にその仕事をさせた理由など、作品をさらに楽しくしてくれる解説です。
対象年齢は小学校中学年となっていますが、本文は漢字を使わずわかりやすい文章で書かれていますので、恐竜好きの小さいお子さんでも楽しめるでしょう。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
続きを読む