むかし、きみには トゲなんて なかったんだよ
「かわいいね」って
みんなに なでてもらえていたんだ
でも・・・
きれいな緑色、丸みを帯びた姿。
それがこの絵本の主人公のサボテンです。
誰から見ても可愛らしく、やさしい心を持ったサボテン。
ところが、いつしか彼女のからだにはトゲがたくさんささり、いつのまにか彼女自身がトゲだらけになっていたのです。心ないコトバに傷つけられ、いじわるをされたとしても、なげかえすのをぐっとがまんしてきたサボテン。本当は痛いはずなのに、泣くことさえも忘れてしまったのでしょうか。自分だけで生きていく術を身につけていったのです。
ふりかかってくる思いもよらぬ出来事に、どう向かい合って、どう生きていくのか。
一人で健気に生きていく彼女の姿に、誰かを重ね合わせて読む人もいるかもしれません。
少し心が痛む人もいるかもしれません。
でもね。
彼女をずっと見守っている「ぼく」は言うのです。
きみは気づいていないみたいだけど、きみに咲く花は、すごくすごくきれいなんだ。
みんながやさしい気持ちになっているんだ。
サボテンの透き通るような心に、幅広い読者層の共感を呼んでいるこの絵本は、第6回Be絵本大賞の大賞受賞作品です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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