チェコの美しい風景を旅する、ある葉っぱの物語。
がけの上にかえでの木が一本。てっぺんには一枚の大きな葉っぱがついています。
葉っぱは木から飛び立つのを楽しみに待っていました。
「ぼくが落ちるときは、うんと遠くまで行くんだ」
ある日の午後、木からふわりと離れた葉っぱはすぐに大きな石の間に落ちてしまいます。
そこで出会った少年に手助けをしてもらい、風に吹かれて飛んで行きます。
葉っぱの長い旅が始まるのです。
丘を越えて、子どもたちの遊ぶ草原から小川の流れに乗り、厳しい寒さの中では葉っぱの上に霜がおり、
雪の下でじっとして、やがて訪れた春になると...。
次々と移り変わる自然の風景の美しさに目を奪われながらも、季節の中で姿を変えていく葉っぱのつぶやきにはそれぞれ重みがあり、読む人の心に響いてきます。希望を胸に広い世界へ飛び出して行く時の喜び、すっかり色を失ってしまった時の悲しみ、その後不安は消え、身も心も軽くなり飛びまわっている時の自由な心。葉っぱは、やがて消えゆく残り僅かな命の中で再び出会った少年に語るのです。
作者はチェコの画家であり作家のムラースコヴァーさん。
自然との交流から詩のような作品を生み出す彼女が1970年代に発表したこの物語に、
時を経て出会ったのが日本人の絵本作家出久根育さんです。
出久根さんはチェコに暮らし、チェコの風景の中で感じた世界観をこの絵本の中で一筆一筆丁寧に描いています。
私たちは絵本を開けばそこにチェコの森、畑、そしてたくさんの命を感じ取ることができるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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