あやちゃんは、日記の代わりに毎晩ノートに絵を描きます。
目を閉じてその日にあった嬉しいことを思い出したら、くるんくるん。
描きあげるのは・・・小さなよつば。
嬉しいことが一つあったらよつばをひとつ。二つあったらよつばも二つ。
さかさかさ・・・さかさかさ・・・
並んだよつばは緑に、とびっきり嬉しいことがあった日は大好きなピンクに塗って!
嬉しい気持ちを言葉にするのは難しいけれど、よつばなら上手に描けるあやちゃん。
小さなノートによつばの野原が広がっていく毎日です。
ある日のこと、あやちゃんはよつばを描けなくなってしまいました。
お友達とのケンカ、思い出すのは悲しい気持ちばかり。
ぼんやりじんわりにじんだ気持ちがあふれて、ポタッ。
目からノートにこぼれ落ちた涙、不思議な事にノートは濡れず、
代わりにピンクのよつばの上に青い絵となったのです。
ようやく嬉しい気持ちが見つかってノートを開いたのは3日目のこと。
よく見ると絵になった丸い涙に穴が開いて・・・顔をのぞかせたのは小さなあおむし!
これは一体なにかしら?あやちゃんのよつばを食べる、この小さいあおむしは?
嬉しいこと、楽しいこと、ワクワクしちゃうこと。
たくさん経験している子どもたちの毎日は、うらやましくなるくらいキラキラしています。
だけど日々の中で必ず訪れるつらいこと、寂しいこと、悔しいこと。
思いがけない悲しみは、幼い胸にどれだけ重くのしかかることでしょうか。
作者の田中てるみさん、あやちゃんのように、息子さんたちと「よつばの日記」をつけているんだそうです。
親子で並んでさかさかさ・・・たあいないできごとの中から嬉しい気持ちを思い出すことで、今日も笑顔に、自由になれる。
子どもだけでなく大人も、こんな風に日々を過ごしていけたら・・・。
あやちゃんの涙を食べてくれるあおむしは、ある日・・・!
淡く優しく、そして伸び伸びと描かれる最後の野原のシーンに、私たちの気持ちも柔らかく解き放たれていくようです。
小さなあやちゃんの気持ちに寄り添いながら、大切な一日一日への向き合い方を気づかせてくれる、ステキな一冊に出会いました。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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