ある山の洞窟に、4ひきのこぐまと、おじいさんぐまがすんでいました。
おじいさんは本を1冊持っていて、4ひきのこぐま、ロナルド、ドナルド、ハロルド、サムに、よく読んでくれました。その本のタイトルは、『りっぱな くまの するべきことが よくわかる ほん』。
「いいか、『りっぱな くまの するべきことは、よく きに のぼり、よく ひるねを し、よく さんぽを して、よく さかなを つるべし』ということじゃ。わかったかな?」
こぐまたちは「りっぱなくま」になるべく努力するのですが、どれもうまくいかず失敗ばかり。
かわりに4ひきは、それぞれ愉快な特技を身につけます。けれどもそれは、本にある「りっぱなくまのするべきこと」とは全く関係のないものでした。
可愛い孫のため一生懸命手本をみせるおじいさんを尻目に、自分勝手に特技を披露するマイペースなこぐまたち。とうとう、おじいさんぐまは、怒ってこぐまたちの夕飯をぬきにしてしまいます。こぐまたちは、いったいどうなるんでしょう。おじいさんの望むりっぱなくまになれるのでしょうか?
何より印象的なのが、こぐまたちの豊かな表情!自分の特技を披露しているときのいきいきと楽しそうな顔ったら。「りっぱなくま」修行に取り組む表情とのあまりの違いに、おじいさんでなくとも、トホホ・・・となりそうですが、読んでいる子どもたちは、きっとすっかり共感してしまうでしょう。夢中になれることが正しい!単純明快、そこには理屈なんかありません。大人はちょっと身につまされる物語の展開にも、子どもたちは大喜び間違いなしですね。
人間味あふれるユーモラスなお話と、あたたかい筆致のモノクロームのくまたちの絵が、アーノルド・ローベル作品ならではの味わいのある作品です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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