江戸期の庶民の生活と心根を描く、「鶴見村もの」の集大成・書き下ろし長編作
おらあぶきだ。のろまでよう。
でも、ぶきだけんどぶきなりに、
たんせいこめりゃいいんだ。
江戸時代の終わりごろ――。
千太郎は、わずか七歳で、奉公に出されることになった。 奉公先は、鶴見村(いまの神奈川県横浜市鶴見区)の建具屋「建喜」。 まだ友だちと遊んでいたいさかりの、千太郎には、 建具職人になろうだなんて気は、さらさらない。
だが、先に奉公に来ていた姉、おこうにはげまされたり、 建喜の職人たちとのふれあいのなかで、いつしか自分も、 腕のよい建具職人になりたい、と思うようになる。
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