ぼくが夜中にトイレに起きた時、窓の外に見えたのは……怪しくてヘンテコリンな姿。
「あ、おとうさんが むかし、うどんを たべたっていってた…うどんかいじんだ!」
確かに白くてうずを巻いているその顔はうどんです。
ぼくが慌てて追いかけていくと、「てんぷらうどんのなみふたつ、おまちどおさま」 古川さんちのねこのミャアとニャアに出来たての熱いうどんを渡しています。どうやら、うどんかいじんは出前中。大きな釣鐘に化けたたぬき、きつねのタクシー、大きな鶴…。次から次へと変わったお客のところへうどんを届けにいきます。
ぼくと、のらねこのねこ吉は、自分たちもうどんを食べたくて、思わずうどんかいじんの後についていってお手伝い。なにしろ、次のお客はうどん二ひゃくです! ガチャガチャ、ドンドコ、ズルズルドン、シューシュー。バタバタで大騒ぎな時間が終わって、うどんも届け終わると、ようやく一息。そして…?
突然現れた「うどんかいじん」なるものに、目を奪われているうち、奇天烈な展開にどんどん巻き込まれていくこのお話。「ぼく」と一緒にふぅー…と一息ついていると、なんだか今度は強烈にうどんが食べたくなってくるのです。
これは夢なのか、現実なのか。「うどんかいじん」は、お腹が空いているから登場したのか、うどんが食べてもらいたいから姿を見せたのか。伝わってくるのは、みんなの食へのパワー。みんながうどんを食べたがっています。山崎克己さんによるナンセンス絵本の世界。ぜひうどんを食べる時のような勢いで楽しんでみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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