あたたかで細やかな筆致で、野菜畑の一年が描かれた大型絵本。
夏休みにいなかのおじいちゃんのうちへ行ったソフィーは、専用の小さな畑と、手にぴったりの大きさの道具をそろえてもらっておおよろこび。おじいちゃんの畑でたくさんの野菜に出会います。
「今夜は、花を食べようか」と言われて知ったのは、カリフラワー、アーティーチョーク、ブロッコリーがどれも、花がさくまえのつぼみを食べていたんだってこと。おじいちゃんの「手押しタクシー」(手押しの一輪車)に、カボチャやメロンと一緒に乗ったソフィーは、畑のあちこちを見て感嘆の声をあげます。
「やさいって、土の中にできるものもあれば、土の上にできるものもあるのね。おもしろいなあ!」
いろんなことを発見しおじいちゃんから学んだソフィーは、その後、秋の畑、冬の畑も、おじいちゃんのてつだいのために訪れ、道具を物置にしまって、春まで眠りにつく畑にお別れをいいます。
さみしくなってしまうソフィーに、おじいちゃんがくれたプレゼントとは?
「春になるまであけちゃだめだよ」だって・・・なんだろう?
四季をとおして野菜はどんなふうにできるのか、私たちが食べているのはどの部分なのか。畑を訪れる虫やたくさんの生き物たちは、どこで何をしているのか。読めば発見がたくさんあります。
なにより絵がおしゃれで美しく、野菜づくりや畑の様子が描かれているので、子どもそっちのけで夢中になる大人もいそうですよ。
日本にはあまりない、料理でなじみが出てきた西洋野菜が出てくるのもお楽しみ。
巻末にはいくつかの野菜の世界地図、さくいんもあって読みごたえたっぷり。
きわめつけはこの絵本、ゲルダ・ミューラーが87歳のときに描いた作品だというのですから・・・!
きっと作者である彼女も畑作りの名人なんじゃないかしらと想像したくなる、畑へのみずみずしい愛にあふれた絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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