ある夏の日、丘に男の子が埋めたひとつぶのどんぐり。
それはだんだん大きくなり、立派なオークの木となって――。
時が過ぎ、人々の暮らす風景がみるみる変わっていく不思議。そして、立ちつづける木の力強さをあじわえる大判の翻訳絵本です。
ページをめくると、鉛筆の線が残るあたたかなタッチで描かれた大きな絵の隅に、4桁の数字が記されています。
「1775」からはじまり、丘のふもとの湖に帆かけ船がうかぶ絵を数枚めくると、「1875」と記されたページには蒸気船が登場しています。
ちいさな小屋しかなかった丘には、レンガの煙突がついた家が建ちました。
その家の前で冬にそり遊びをする子どもたちは、大人になり独立し、また子どもが生まれ、オークの木の下での遊びがつづいていきます。
「1900」には、暗闇の夜だったまちの家々にあかりがともりはじめます。
年輪を重ねたオークが立派な枝をのばす下で、「1925」には車が走るようになり、馬車から車の時代へ。
「2000」と記されたページでも、木は立っていました。
いつまでもいつまでも、そこに立っているように思えましたが……。
もうお分かりでしょうか。数字は年代。計算すると200年以上もの間、オークの木は丈夫な根っこと幹で立ちつづけているのでした。
暮らしを描き出すこまやかな視点が、私たちを映画のような世界へつれていってくれます!
幼児から大人まで幅広い年齢層が一緒に楽しめる絵本。
作者G・ブライアン・カラスには『ちきゅう』『うみ』という素敵な絵本もあります。あわせて読んでみてくださいね。
時代が変わり暮らしが変わっても、ずっと変わらないものが、最後には描かれていますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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