海辺で男の子がバケツとシャベルを手に遊んでいます。
黄色いコートに長靴をはいています。
どこから来たのか、黒いぶち模様の白い子犬がそばに寄ってきました。
子犬は男の子をじっと見上げます。
「やあ、きみ。きみは だあれ? ついてきたの?」
「きみはぼくと ともだちに なりたいんだよね、
でも ぼくたちは ともだちには なれないんだ」
理由は……男の子にはもう「とびっきりのともだち」がいるから。
亡くしてしまったけれど、ずっと大切な「とびっきりのともだち」だから。
男の子は子犬と目をあわせません。
ともだちがいた心の中の居場所を守ろうとして、男の子は心を閉ざしています。
でも、だんだん男の子の心に変化がおとずれます。
浜辺を子犬と一緒に歩いて。
嵐を感じて。
カミナリから逃げて。
雨の中で子犬と見つめあい、だっこする場面にはじーんとしてしまいます。
切なくもかわいらしい、子犬の表情がいっぱい。
男の子の表情も目を引きます。
気持ちが通じ合い、ぬくもりをわけあう……。
そんなささやかな幸せに、じわじわと心が満たされていきます。
子どもも大人もふと感じるさみしさやよろこび、
そして「とびっきり」だからこそ湧いてくる思いを、
やさしく癒してくれる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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