真っ青の毛糸の素敵なワンピースを着ているのはニットさん。
ニットさんは毛糸の編み物が得意です。
シャカ シャカ シャカ シャカ、何だって編んでしまうのです。
「ちょっとふにゃふにゃだけど」なんて言いながら、すわり心地のいいイスとテーブルを編んでしまいます。冷たい風が吹いてきて寒くなれば、毛糸で家だって編んでしまいます。
ニットさんすごいよ、すごい!
驚いている間にも、芝生やお花やちょうちょまで!ニットさん、どんどん編んでいきます。あれ、しましまのネコちゃん。ちょっとこれは大きすぎたかな?
見渡せば絵本には毛糸で出来たものばかり。この楽しくてワクワクするお話の作者はたむらしげるさんです。
今までのたむらさんの作品の感じとちょっと違うような気もしますね。
それもそのはず、ニットさんに登場する編目の部分は、実際に編んである毛糸各色をスキャニングして、プリント、手でちぎって台紙に貼り付けているちょっと不思議な技法とか。色鮮やかな毛糸が白地の背景に映えてとてもきれい。ニットさんらしく、ほんわかゆったり、でもどこかユニークな雰囲気が魅力的です。
最後はたむらさんらしく。じょじょに、じょじょに、いつの間にか、とてつもなくスケールの大きな物語になっていて…。
「世界は毛糸で出来ている!?」
もしそんな事が本当にあっても、心まで暖めてくれそうで…悪くないかもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む