息をのむほどに美しい森の四季。春、木々は芽吹き、森は明るいみどりにつつまれます。
深い森を進んでゆくと、1本の大きなみずならの木があります。
夏、みずならは枝いっぱいに葉を広げ、森は万緑に満ちあふれています。
秋、みずならはたくさんのどんぐりを枝につけ、動物たちが木のまわりにやってきます。
動物たちは地面に落ちたどんぐりを食べたり、冬にそなえて巣に運んでいます。
冬、森は雪におおわれ静まりかえっています。森の一年は、こうしてすぎてゆきます。
長い年月がたったある春、大きなみずならの芽吹きにいきおいがありませんでした。
年老いたみずならは、朽ちはじめていたのです。ある日、とうとうみずならの木は……。
息をのむほどに美しい森の移り変わりの中で、生命をつないでゆく一本のみずならの物語を、
高森登志夫氏の筆は、まるで空気のにおいや、木々をゆらす風の音まで感じさせるように、
精緻にしかも叙情豊かに描いています。
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