太平洋戦争末期、浅草寺の大きないちょうの木は、幼いカズヤとなかよしだった。しかし、戦争が激しくなってカズヤは母と共に疎開していく。そして、東京大空襲の日、燃えさかる火の中、木はカズヤとの再会を夢見て頑張るが…。
【編集部より】
浅草寺に実際、今もある戦災木…東京大空襲によって幹の半分が深くえぐれ、うろ状態になったいちょうの木にインスピレーションを得て、宮川ひろ氏が、心に迫る物語を紡ぎ出してくれました。当初三人称で短編として「びわの実」に入れられた作品を、絵本にするにあたって、「木の語り」に変えました。物言わぬはずの木の、静かな中に戦争への深い悲しみや怒りをこめた語りが読み手の心をうちます。また、渡辺洋二氏の絵も、どこか幻想的な中、決して声高ではない、平和への祈りをこめたものです。
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