フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ27巻は、芥川賞作家の町田康さんがグリム童話をもとに紡ぐ物語、『猫とねずみのともぐらし』
いっしょに暮らしていた猫とねずみは、厳しい冬に備えて、おいしい油の入った壷を教会に隠していました。
ところが、猫はねずみに秘密で、隠しておいたその油をみんな食べてしまったのです。
それを知ってねずみはカンカン!
ねずみに許してもらうため、通りがかる人々に食べ物を恵んでもらおうとする猫。
しかし、いくら頼んでみても食べ物は手に入りません。
困り果てていると、ふたりの前に魔法使いが現れます。
「そんなに怖がらなくてもいい。私は善い魔法使いです。あなた方を王子様とお姫様にしてあげましょう」
はてさて、ふたりはどうなってしまうのやら……。
グリム童話「猫とねずみとお友だち」をもとに、大胆なアレンジを加えてふたりの運命をより数奇なものにした本作。
グリム童話では、油をなめたことが知られても悪びれる様子などなく、逆にねずみを食べてしまう猫ですが、この物語ではねずみに怒られて恐縮しきりの、どこか憎めないキャラクターになっています。
白馬に乗った王子様。
赤いフードの女の子。
おんどり、めんどり、それからアヒル。
猫とねずみのそばを通るのは、グリム童話で見たことのある面々。
しかしその誰もが猫とねずみの頼みを聞き入れてくれないなかで、あげく現れた聖母マリア様などふたりに答えていわく、
「いまいそがしい」
マリア様のまさかの態度や、原作からは想像もつかない意外な結末など、良い意味で読者の期待を巧みにハズす展開がみどころ。
なぜ猫はねずみを追うようになったのか?
そのわけが語られる驚きの童話!
(堀井拓馬 小説家)
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同タイトルのグリム童話をもとに、作家の町田康さんは創作した絶品。町田さん初めての絵本です。
絵は、町田作品の装画を多数手がける寺門孝之さん。
町田さんは、「猫とねずみ」という相容れないものが一緒にいるということを描いてみようと思った、と言います。
これは、宗教や文化の違うもの同士の共存にも繋がるかもしれません。ねずみとの約束を破った猫の負い目、
破られたねずみの怒り、誰も頼れない、心の中に木枯らしが吹くような乾いた間、そして思いがけないところから
急転する人生……。グリム童話の登場人物を随所にちりばめながら進む物語は圧巻。その気配を、一貫して
青い画面が印象的に支えていて、気がつくとどちらが本当か分からない異世界に誘いこまれてしまいます。
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