タイムマシンはつくることができるのか?
少年の問いに“それ”は答えます。
「できるとも。地球人でも、それをちゃんとつくった人がいた」
その地球人は、わたしたちのよく知っているとある人物だというのですが─
少年が出会ったひとつのかんづめ。
これがふつうのかんづめだったらもちろんお話にはなりません。
かんきりをあてがわれて思わずやめろと叫ぶそれ、中身はなんと宇宙人。
かんづめのなかの宇宙人は、少年に不思議な物語を語って聞かせます。
タイムマシンを作ったとある有名な地球人の話。
とつぜん命の宿った犬の人形の話。
物を小さく縮めることのできる機械を発明したどろぼうの話。
かつて宇宙から飛来した、ある地球の生物に似た地球外生命体の話。
宇宙の「はしっこ」とはどういうものかをたとえたおとぎ話。
元々1967年に発表された作品ながら、まるで古くささを感じさせないアイデアに彩られた、SFの楽しさのお手本が詰まったような一冊。
宇宙の彼方や、未来の技術への好奇心をくすぐる五つのお話が、素直なわくわくを感じさせてくれます。
ところで、どろぼうが発明する物を小さくする機械というのがドラえもんのスモールライトに似ているのですが、スモールライトが初めて登場したのは1973年。
そう、なんと本作のほうが古いんです。
おおよそ半世紀も前に想像された宇宙や、未来の姿が描かれているのだということをふまえて読んでみると、また違った味わいの読書体験になっておもしろいですよ!
(堀井拓馬 小説家)
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