日ざしが照りつける、夏の帰り道。ぼくは、「くるまいす」に乗ったまま、動けなくなった男の人に会います。
「おっちゃん、なにやってんの?」
「ごらんのとおり、でんきでうごくくるまいすにのってるんやけど、ほら、スイッチをいれても、ウンともスンともいわんやろ」「きっとでんきがなくなったんや。まったく、トホホやで」
困り果てたおっちゃんの話を聞いたぼくは、公衆電話があるコンビニまで、車いすを押してあげようとしますが・・・?
いざ押しはじめると、おっちゃんが乗った車いすは、ほんまに重い! 汗はぽたぽた。のどはカラカラ。
同じ学校の女子にほめられ、「えらいわねぇ〜」「かんしんやなあ」と道で会う大人にほめられ、すっかり嬉しくなってしまうぼく。でも、人気がない登り坂までくると、急に疑問がふくらんできます。
(ぼくは、ええことしてるところを だれかにみてもらいたかっただけやろか?)
作者は『おこだでませんように』のくすのきしげのりさん。男の子の元気と心の葛藤を描かせたら、まさに天下一品。
そして画家福田岩緒さん描く「ぼく」の表情が、とってもいいんです。あとさき考えずに車いすを押すことになったときの顔、ほめられて舞い上がる顔、歯をくいしばって押す顔・・・。人の好さそうなおっちゃんの表情もいい感じ。
「ええこと」をするとき、他人の目線が気になるのは、大人も子どもも同じですよね。
何のために「ええこと」をするのか? 本書にその「答え」が文字で書いてあるわけではないけれど、読んだらきっと誰もが考えさせられ、何かを感じとるのではないでしょうか。
前作『ともだちやもんな、ぼくら』にひきつづき、マナブ、ダイスケ、ヒデトシの3人が登場。
マナブ(ぼく)が車いすを押すのを見ていたダイスケとヒデトシが、最後にどうするのかも見どころです。
爽快な結末をお楽しみに!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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