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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  ユニークな作品にファン多数! エドワード・ゴーリーの世界翻訳者 柴田元幸さんインタビュー

源氏物語が好きで、龍安寺の石庭を訪れたがっていたゴーリー

───エドワード・ゴーリーについてもう少し教えてください。

シカゴ生まれのゴーリーは、高校卒業後、シカゴの美術学校に通いますが一学期で退学。徴兵されて三年間兵役についたのち、ハーバード大学に入学します。
卒業後はニューヨークの老舗出版社ダブルデイに就職し、専属ブックデザイナーとなりました。
大学を出たばかりの若いゴーリーが、カフカの『アメリカ』、キルケゴールの『恐れとおののき』、ヘンリー・ジェイムズの一連の小説等々に絵を描いて、それが作品に対する優れた批評になっていることに驚きますよ。


数多い番組ポスターの中でも有名な一枚と言われる。『エドワード・ゴーリーの世界』(河出書房新社)より

いちばんアメリカ人が目にしているのは「Mystery!」というテレビ番組の冒頭1、2分のアニメーション画でしょうね。ただ一般的には、ゴーリーの絵だとはほとんど知られていないと思います。
1977年の「ドラキュラ」ブロードウェイ公演では舞台美術と衣装デザインを担当し、翌年トニー賞(最優秀衣装部門賞)を獲得してもいます。

───インタビュー集を読むと、才能にあふれた奇人のゴーリーと、甥っ子に料理をしたり近所付き合いの人当たりもいい、猫好きでおだやかなゴーリーと両方が浮かび上がってきて興味深いです。写真を見ると、とてもきれいな青い目をしていたのではないかしらと思ってしまいます。

ゴーリーは、文学、音楽、映画等さまざまな芸術に関し大変な博学でした。独自の趣味に裏打ちされた教養が、作品全体の底流となっています。
京都の龍安寺の石庭が世界でいちばん行ってみたい場所だと、親交のあった児童文学者ピーター・ニューマイアーへの手紙に書いていたり、紫式部の源氏物語を10回近くも数人の訳で通読しているなど、日本の文化に興味があったみたいですね。
今『憑かれたポットカバー』(The Haunted Tea-Cosy)を訳しているのですが、弟が北海道(Hokkaido)にいる、という突飛な設定が出てくるんです。どうして北海道だったのか、聞いてみたいけど、どうせまともな答えは返ってこないでしょうね(笑)。

ゴーリーは造本にこだわった作品をたくさん出していて、私家版も含めるとものすごいバリエーションがあるんですが、たとえば日本でも出版されている『雑多なアルファベット』、これは本来豆本として出版されたものです。
彩色された素敵なものですよ。カバー中央にあるのがその豆本です。
『雑多なアルファベット』は、アメリカでは廉価版「アンフィゴーリー」に収められているだけなので、一冊の本になっているのは日本だけかもしれません。


「本のサイズは変えてもいいけれど、絵のサイズは変えないように」と著作権者から指定を受け、この仕様になったのだとか。

───コンパクトでかわいい本ですよね〜。
そして柴田さんの訳が絶妙です!
「昆布選るなら寄り合って。In sorting Kelp/Be quick to help.」に笑ってしまいました。
「病んだら早急 薬を請求。Request a Pill/When you are ill.」にも。

でも全部が全部、こんなふうに韻をふんだ翻訳だとおもしろくないんですね。やっぱり言葉のリズムを変えたほうがいい。
「親指で拾え パン屑。」(これは丸谷才一の『裏声で歌へ君が代』を踏まえています)、「嘗(な)めたらあかん 澱粉糊(でんぷんのり)。」みたいなのもないとね。

───いちばんの問題作と言われる『おぞましい二人』についてもお聞きしたいのですが。
実際にイギリスであった殺人事件にショックを受けて、ゴーリー自身が「書かないではいられない」気持ちで書いたと言われる本だそうですね。
不幸な生い立ちの男と女が夫婦になり、子どもを誘拐して殺す。翌朝の夫婦の食事メニューをゴーリーはものすごく考えたとか。

『おぞましい二人』を翻訳するとき、ずいぶん著作権者(ゴサム・ブックマートの店主であり編集者のアンドレアス・ブラウンさん)から反対されたんですよ。
これ一冊で、アメリカでゴーリーがどれだけ批判され、どれだけ多くの読者を失ったかと。

日本での出版前に、ゴーリー作品のイベントを行った東京のクレヨンハウスと、大阪のクレヨンハウスで、スライド上映しながら『おぞましい二人』を訳しつつ見せました。この本を出版してもいいと思うかどうか、会場でお客さんに聞いてみたら大阪ではみんな「いい」といい、東京では「いい」「だめだ」という意見が半々だった。

───それはどうしてでしょう。

……ねえ。出来過ぎだなあという感じもしますけど、大阪のほうが見せかけの“良識”をよしとしない文化の素地があるのかなあ。編集者は、その結果に、逆に背中を押してもらったそうですけどね。
いざ、日本で出版して抗議が来たらちゃんと向き合わなければいけないだろうと僕も覚悟はしていました。でも日本では抗議はなかったですね。

───そして最後に、ゴーリー初期傑作の一つと言われる『蟲の神』!
ちょっと怖そうな絵本ですよね。でももし私が子どもの頃にこの本を読んでいたら、きっと好きだったと思います。
夕闇が近づくとき、本当に魔のものにさらわれそうな……そんな感じがリアルだからです。ミリセント(愛称ミリー)という少女の名前も、小さな女の子という感じがして好きです。

蟲の神
蟲の神の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社

おお 恐怖、憤怒、哀れみの思い。物事はどうしてこうも 上手く行かぬのか――。蟲の神の生け贄に 捧げられた少女のゆくえを描く、ゴーリー初期の大傑作、ついに邦訳!

この本ね、僕はもっと早く出したかったんだけど編集者が虫嫌いでね(笑)。
原題は
The Insect God。この表紙を見てもらうと、虫の脚が4本なんですよ。

───わっ、たしかに! だからよけい人間みたいで不気味な感じがするのかも……。

『蟲の神』は1963年にアメリカで『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『ウエスト・ウイング』とあわせて3冊箱入りセットで発売されました。
3冊の中でも異彩を放っていますよね。韻文、七五調で訳してあります。

(編集者):エドワード・ゴーリーの絵本は、様々な魅力があります。一度手にとって「ムーミンシリーズ」のトーベ・ヤンソンの作品のように、子どもから大人まで読んでいただけたら嬉しいです。
実はトーベ・ヤンソンはエドワード・ゴーリーのような作品を描きたいと言っていたそうですよ。短編『黒と白』はゴーリーに捧げられています。

───トーベ・ヤンソンがゴーリーに捧げた短編があったとは知りませんでした。2人の作家を見る目がまた違ってきそうです。
最後に、柴田元幸さんから、絵本ナビの読者へメッセージをお願いします。

ときどきは「自分はこんな本は嫌いじゃないか」と思うものを、ぜひ読んでみてください。
僕は何か月かハーバードにいたとき研究休暇でいつもより時間があったので、ふだんの自分なら絶対読まないだろうと思う本で、世間では話題になっている本を一冊読もうと思いました。それで手にとったのが、結果的に自分にとって“2000年代で最良のアメリカ小説”だったんですよ。
『地図になかった世界』(白水社、小澤英実訳)という題で日本でも翻訳が出ている、エドワード・P・ジョーンズの作品です。南北戦争前のヴァージニア州で、自由になった黒人が黒人奴隷を所有していたという歴史的事実をふまえて書かれた長編小説なんですが、僕はふだん、奴隷制を題材とする歴史長篇とかには興味をそそられない。けれど『地図になかった世界』を読んでみたら……、壮大で、人々の喜怒哀楽が静かに詰まっていて、奇跡のような広がりをたたえた素晴らしい小説でした。

だから何を言いたいかというと、「こんなジャンルやノリは自分は興味がないな」と思うものを、時に読んでもらうと、またぜんぜんちがうものに出会えるのではないかと。もしかしたらすごい世界が目の前に広がるかもしれません。

今って、あなたの好みはこうでしょう、と、どんどんウェブサイト上やメールで勝手におすすめしてくれますよね。情報が広がっているようで、実はどんどん狭められている感じがします。ぜひその外に出てもらうのがいいんじゃないかなあと思います。
つまり、「ゴーリー読んでね!」ってことなんですけどね(笑)。

───はじめて出会うゴーリー作品から、不可解な魅力にふれる喜びを教えてもらった気がします。
素敵なお話とメッセージをありがとうございました!

編集後記

柴田元幸さんが少年時代を過ごした、地元駅近くの喫茶店でお話をうかがいました。
気取らない雰囲気の人々が行き交う町でしたが、柴田さんがこれまで翻訳し日本に紹介してこられた現代アメリカ小説群の大きさを思うと、いったいどこからお話をうかがったらいいのかと緊張の思いでいっぱいでインタビューははじまりました。
しかしエドワード・ゴーリーという作家について、翻訳者としての立場から、そして個人的な出会いの立場から、ざっくばらんにお話くださり、わくわくするような刺激に満ちたあっという間の2時間弱でした。
柴田元幸さんのまなざしから、あらためてエドワード・ゴーリーの世界をのぞきみることができた貴重なインタビュー、ぜひじっくりとお楽しみください。
そしてゴーリーの絵本を、一度手にとってみてくださいね!

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インタビュー・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子

出版社おすすめ



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柴田 元幸(しばたもとゆき)

  • 1954年、東京生まれ。アメリカ文学研究者。2005年『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞受賞。ほかの著書に『生半可な學者』(白水Uブックス、講談社エッセイ賞受賞)などがある。2010年、ピンチョン『メイスン&ディクスン(上・下)』(新潮社)で日本翻訳文化賞受賞。

エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)

  • 1925年、シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。またエドワード・リアやサミュエル・ベケットらの作品の挿画、劇場の舞台美術なども手がけた。幻想的な作風と、アナグラムを用いた(Ogdred Weary など)ペン・ネームを使い分けて、たくさんの私家版を出版したために、多くの熱狂的コレクターを生みだした。厖大な作品とミステリアスな人物像については『エドワード・ゴーリーの世界』(濱中利信編、小社刊)『どんどん変に… エドワード・ゴーリー インタビュー集成』(小山太一・宮本朋子訳、小社刊)で知ることができる。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。

作品紹介

ギャシュリークラムのちびっ子たち
ギャシュリークラムのちびっ子たちの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
絵:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
うろんな客
うろんな客の試し読みができます!
作・絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
優雅に叱責する自転車
優雅に叱責する自転車の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
不幸な子供
不幸な子供の試し読みができます!
作・絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
蒼い時
蒼い時の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
華々しき鼻血
華々しき鼻血の試し読みができます!
著:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
敬虔な幼子
敬虔な幼子の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
ウエスト・ウイング
ウエスト・ウイングの試し読みができます!
著:エドワード・ゴーリー
出版社:河出書房新社
雑多なアルファベット
雑多なアルファベットの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
キャッテゴーリー
キャッテゴーリーの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
出版社:河出書房新社
まったき動物園
まったき動物園の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
題のない本
題のない本の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
日本語表記:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
おぞましい二人
おぞましい二人の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
ジャンブリーズ
ジャンブリーズの試し読みができます!
文:エドワード・リア
絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
輝ける鼻のどんぐ
輝ける鼻のどんぐの試し読みができます!
作:エドワード・リア
絵:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
悪いことをして罰があたった子どもたちの話
悪いことをして罰があたった子どもたちの話の試し読みができます!
絵:エドワード・ゴーリー
文:ヒレア・ベロック
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
蟲の神
蟲の神の試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
むしのほん
むしのほんの試し読みができます!
作:エドワード・ゴーリー
訳:柴田 元幸
出版社:河出書房新社
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