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親子のためのおたすけ絵本第二弾!『すききらい、とんでいけ! もぐもぐマシーン』 翻訳家・野坂悦子さんインタビュー

みなさん、お子さんの好き嫌いでお悩みではありませんか? この絵本に登場するレナも好き嫌いがたくさんある女の子です。そんなレナの好き嫌いを克服するために、おじさんが作ってくれた発明品が「もぐもぐマシーン」。いったいどんなマシーンなのでしょうか……。オランダで出版された、この絵本。今回は翻訳家の野坂悦子さんにインタビューを行いました。オランダ語の翻訳の難しさ、野坂さんの翻訳家としての原点、そしてこの絵本の魅力についてたっぷりと伺いました。

すききらいとんでいけ!もぐもぐマシーン
すききらいとんでいけ!もぐもぐマシーンの試し読みができます!
作:イローナ・ラメルティンク
絵:リュシー・ジョルジェ
訳:野坂 悦子
出版社:西村書店

親子のためのおたすけ絵本、第二弾! こどものすききらいをなくすには、どうしたらいいの? レナは髪の毛が短くて、ちょっぴりそばかすのある、ふつうの女の子。 でも、食事のときは、いつも困ってしまいます。 だって、好き嫌いがとっても多いから。 お友達の家でも、学校のお誕生日会でも、食べられないものが出てきてはあせったり怒ったり。 そんなレナに、発明の得意なレナのおじさんが、あるモノを作ってくれました。 さあ、レナの好き嫌いはなくなるのでしょうか…? 巻末に、小児カウンセラーの著者による、食欲不振の起きる理由やその対処法、 食事を楽しいものにするためのヒントなどについての解説も収録。

親子のお悩みを解消? ベルギーからやってきた「おたすけ」絵本

───『すききらいとんでいけ! もぐもぐマシーン』は、「親子のためのおたすけ絵本」第二弾として出版されました。

第一弾は『おたすけなみだとおじゃまなみだ』という、心配で涙がすぐに出てしまう女の子の物語。今回は好き嫌いの多い女の子の物語です。

───とってもカラフルで、ピンクのドレスを着たレナにパッと目が行く、かわいい表紙ですね。

絵を描いたリュシー・ジョルジェはフランス出身のイラストレーター。今の時代を上手に取り入れたテクスチャーのイラストを多く発表しているんです。そんなポップな雰囲気が、この絵本にも取り入れられていると思います。

───この絵本は野坂さんがご自身で出版社に持ち込んだ作品なんですか?

いいえ。西村書店さんがこの絵本を出版しているベルギーの出版社、クラヴィスと版権交渉をして、私に翻訳の依頼が来ました。私自身、クラヴィスとは翻訳者として歩みはじめたときから付き合いのある出版社なので、ぜひやらせてください!と、翻訳のおはなしをお受けしました。

───ベルギーの出版社ということは、原書はベルギー語なのですか?

ベルギー語というのは存在せず、ベルギーの北半分はオランダ語を話す人たち、南半分はフランス語を話す人たちです。この本はオランダ語で書かれていて、ベルギーとオランダは同じ言語を使っているんです。クラヴィスはベルギーとオランダ、両方に会社があり、出版と同時に二つの国の子どもたちに読んでもらえるんですよ。


日本語とオランダ語の絵本。少しデザインが違います。

───1冊の絵本がベルギーとオランダの両方で流通しているなんて、海外ならではという感じがします。はじめて原書を読んだときの感想を教えてください。

リュシー・ジョルジェの絵が、かわいくて。かわいいけれども子どもに媚びすぎていない点や、ちょっとシュールな点に惹かれ、いい絵だなと思いました。ベルギーでは、「親子のためのおたすけ絵本」シリーズが5冊ほど出版されているのですが、「食べ物の好き嫌い」というテーマが日本の子どもたちにとても身近なので、きっと楽しんでもらえる!と思いました。

───翻訳で大変だったところはありますか?

海外の絵本を翻訳するときは、描かれている日常の様子や文化を、日本の子どもたちに身近に感じてもらえるように訳すことに一番気を使います。例えばこの作品では、アフリカ生まれの女の子、ケミちゃんの誕生会が開かれますが、いろいろな国の子が登場する場面は日本の絵本では少ないと思います。絵本から海外の子どもたちの様子を知ることができて、子どもたちの視野が少しでも広がれば……と思いながら翻訳をしています。

───ケミちゃんがクラスの子どもたちに渡す、カラフルなおだんごやクッキーからも、「どんな味の食べ物なんだろう……」と、子どもたちがアフリカの食文化に興味を持つきっかけになるように思いました。

この部分は、ほんの少しでも差別的に感じてしまうと意味が変わってきてしまいます。レナは、アフリカの子が出してくれたお菓子だから嫌いなのではなく、知らない甘いものを食べるのが苦手なんだと読者にわかってもらうように、文章に差別的なニュアンスが出ないよう、かなり考えて翻訳しました。

───大人も知らない食べ物が出てきたとき、大なり小なり警戒はしますよね。そういう意味でも、レナの心情はとても理解しやすいと感じました。この絵本にはいろいろな食べ物が出てきますが、その翻訳も工夫が凝らされているように思いました。

そうですね。レナの好物の「ハチミツソースのハンバーグ」も、原書では「アップルソースのかかったスパゲッティ」だったんです。

───「アップルソースのかかったスパゲッティ」? それも味が想像できないですね。

「アップルソース」は日本ではなじみがありませんが、オランダやベルギーでは「アップルムース」と呼ばれていて、豚肉のつけあわせにも使うし、おやつにも使うし、一般的な食べ物なんです。でも、日本でそのまま書いても伝わりませんよね。それで、子どもたちになじみ深いハンバーグに甘いソースがかかっている「はちみつソースのハンバーグ」となりました。

───パイナップルが乗っているハンバーグもありますから、たしかに子どもたちにはイメージしやすいですね。

特にこの作品では、食べ物の翻訳が難しかったように思いますね。カリフラワーも原書では「カリフラワーのごちそう」と書いてあって、料理名は特に書いてありませんでした。少しでもレナの生活を身近に感じてもらうために、カリフラワーの料理も具体的に考え、出てきた案が「グラタン」だったんです。

───料理の名前が変わるだけで、印象も大きく変わりますね。

細かい部分を上げると、日本語に訳すときに悩む部分はたくさんあります。例えば、今回の主人公ですが、原書では「レナ」ではなく、「ピンチェ」という名前でした。でも、「ピンチェ」では、あまり日本の子どもたちになじみがないだろうと、西村書店と相談して、「レナ」に変えました。

───主人公の名前が変わることもあるんですね。

小さな子どもが読む本の場合は、ありえます。今回は西村書店の編集者さんから、クラヴィスへ確認してもらい、作家の了承をいただいたうえで変更しました。日本で勝手に変えるわけではないんですよ。

───「食べ物」や「日常生活」、主人公の名前って、子どもたちにとって一番身近なところだと思います。翻訳のお仕事では、それを日本の子どもたちが分かるように訳すにはどうするか、細かい工夫を重ねているんですね。

今回、一番難しかったのは「もぐもぐマシーン」の命名でした。原書では「エイトマシーンチュ」、訳すと「たべる機械」になるのですが、それだとあまりにも直訳過ぎて面白くないので、いい表現はないか、いろいろ考えました。「すききらい ないないマシーン」とか「すききらい きえーるマシーン」とか……。その中から選ばれたのが「もぐもぐマシーン」だったんです。


とってもふしぎな「もぐもぐマシーン」が登場!

───候補で出た、どの名前もかわいいですが、やはり「もぐもぐマシーン」が一番しっくりきます。タイトルに「すききらい とんでいけ!」と書いてあるのも、おはなしのテーマが分かりやすく読者に伝わると思いました。

そうですね。そして「もぐもぐマシーン」のビジュアルがとてもユニークで、私は大好きなんです。

───箱の中からいろいろな手が出てきて、きらいなものを口の中に入れるマシーン。絵を見るとどういう構造になっているのか、とてもふしぎですが……(笑)。こんな機械を作れるなんて、すごいおじさんですよね。

ええ。もしこの「もぐもぐマシーン」が現実にあったら、好き嫌いがある子も、楽しく食事をすることができるのではないかと思います。

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野坂悦子(ノザカエツコ)

  • 東京に生まれる。オランダ語を中心に、海外の絵本や児童書を数多く紹介している。主な翻訳作品に、 『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』(共訳・金の星社)、『第八森の子どもたち』(福音館 書店)、『きつねのフォスとうさぎのハース』(岩波書店)、『おとうとのビー玉』(大月書店)、 『シェフィーがいちばん』(BL出版)、伝記の翻訳に『かえるでよかった−マックス・ベルジュイスの生涯と仕事−』(セーラー出版)など。2001年、「紙芝居文化の会」の創立に加わり、日本の文化としての紙芝居を 海外に広める活動もつづけている。

作品紹介

すききらいとんでいけ!もぐもぐマシーン
すききらいとんでいけ!もぐもぐマシーンの試し読みができます!
作:イローナ・ラメルティンク
絵:リュシー・ジョルジェ
訳:野坂 悦子
出版社:西村書店
おたすけなみだとおじゃまなみだ
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文:イローナ・ラメルティンク
絵:リュシー・ジョルジェ
訳:野坂 悦子
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