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「父」になった戸惑いを描く、ヨシタケシンスケ初の育児マンガ『ヨチヨチ父 とまどう日々』ヨシタケシンスケさんインタビュー

りんごかもしれない』、『もうぬげない』(共にブロンズ新社)、『りゆうがあります』、『なつみはなんにでもなれる』(共にPHP研究所)など、今、最も勢いのある絵本作家のひとり、ヨシタケシンスケさん。そんなヨシタケさん初となる育児エッセイが出版されました。月刊雑誌「赤ちゃんとママ」で約3年間連載されていた「ヨチヨチ父」をまとめた作品。「“ヨチヨチ”ってどういうこと?」「パパ目線の育児エッセイ?」など、本を手にする前からいろいろな想像が膨らみます。今回は、発売前のヨシタケさんのアトリエにお邪魔し、『ヨチヨチ父 とまどう日々』に込めた思いを伺いました。全国のパパママ必読の内容。ぜひ、お楽しみください。

子育て中の戸惑いを伝えたいと思い、連載をスタートさせました。

───初の育児エッセイ出版、おめでとうございます。『ヨチヨチ父』という、ちょっと気になるタイトルは、育児雑誌「赤ちゃんとママ」で連載されていたときのタイトルと同じですよね。

はい。2013年から約3年間連載をさせていただいた、育児エッセイを1冊にまとめたのが今回の作品です。1冊にまとめるにあたり、デザインを一新し、さらに追加エピソードや新たなイラストカットも描き下ろしました。

───2013年というと、『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)でデビューされた時期ですね。「赤ちゃんとママ」の中で、パパ目線の育児エッセイを描くというテーマは編集の方からの提案だったのでしょうか?

「赤ちゃんとママ」という雑誌は、はじめてお子さんができてママになった人が、読んで役立つ育児のアイディアや離乳食レシピ、困ったことへのQ&Aなどが載っています。だから、基本的にママ目線、ママ宛に描いてあるものが大半です。でも、はじめてママになったとき、同じタイミングで男性も「パパ」になっているんですよ。「パパ目線で育児について描いているものが少ないので、連載しませんか?」と、編集者さんからテーマをいただいて、「ヨチヨチ父」はスタートしました。

───連載第1回目の「正直な感想」ですでに、出産時のパパの心情を赤裸々に描いていますよね。これは絶対にママに気づかれてはいけない、心の内に秘めておかなければいけないことだと思うのですが、ヨシタケさんの手にかかると、「パパってきっと、そうだよなぁ……」となんだか納得してしまうのがふしぎでした。

連載時に決めていたことは、ぼくが、34歳でパパとなって、子育てをしていく中で戸惑ったことや困ったことを、ぼくなりに描くということなんです。世の中には山のように育児本やパパママ奮闘記があるけれど、そういう作品は、著者であるパパママの体験が元になっていますよね。ネットやSNSなどでも、我が子の面白い発言や行動などをバンバン上げている方たちがいらっしゃる。物量や熱量を比較したら、その方々に対抗するのはムリだな……と、早々に感じたんです。

───なるほど……。

じゃあ、ぼくが体験したことを皆さんに見ていただくためには、どんなことができるだろう……、どうすれば、わざわざお金を払って買ってくれた皆さんが、満足してくださるだろう……と考えたら、自然と「我が家は」ではなく「世の中のパパはこう思っていますよ」という切り口になっていったんです。

───世の中のパパが思っていることというと?

連載で繰り返して描いている事なんですが、ぼくが父親になって感じたことは「育児はすべてケースバイケース」ということ。例えば、「本に出てくる赤ちゃんは毎日3時間寝ているけれど、我が子は30分ごとに目が覚めて泣く」とか、「この家の近くにはおじいちゃんおばあちゃんがいるけれど、うちは何かあったときに頼れる距離に両親がいない……」とか。世の中に出回っている「育児本」が、そのまま当てはまる人って、ほとんどいないと思うんです。

───たしかにそうですよね。

でも、「育児はケースバイケースだよ」とか、「世の中で言われている、子育て最高!という話は、実は当てにならないよ」というような、身も蓋もないようなことを伝えるのはとても難しいですよね。それを共感できるように面白く伝えられたら、ぼくらしいものになるんじゃないかと思い、連載をスタートさせました。

───ともすると、今の育児論に対して、反論のように感じる内容かもしれないのに、どのページを読んでもクスッと笑えて、「なるほど、たしかにそういうこともあるよね」と納得する内容になっているのが、ヨシタケさんのなせる技だなぁと思いました。

連載当時は、何を取り上げたら、それをどうやって描いたら面白いと思ってもらえるんだろうか……ということを常に考えていましたけどね。そういう意味で、非常にやりがいのある仕事でした。それと、第1話で描いたような、普通の育児書では決して描けない、言ってはいけない、身もふたもないことを、どうやって共感してもらえるように描くか、それをこの連載では続けてきました。

───例えば「48 だまされた!」などは、世の育児美談に対して、鋭く切り込んでいますよね。

ぼくが最初の子育てのとき、辛いと感じたことのひとつに「子育ては楽しいものだ、幸せなものだ」という社会の認識に対して、子育てを全然楽しめていない、日々大変だと感じている自分に対する、父親としての自分の不安がありました。でも、そう感じているパパ、ママは少なからずいるんじゃないか。「育児幸せ」「子育て楽しい」という、美しい部分だけではない、「子育てって大変だよね」「育児って、楽しいばかりじゃないよね」という、言いたいけれど言えないところを、表現をうまく変えて伝えることだと思ったんです。

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ヨシタケシンスケ

  • 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。

作品紹介

ヨチヨチ父 とまどう日々
ヨチヨチ父 とまどう日々の試し読みができます!
作:ヨシタケシンスケ
出版社:赤ちゃんとママ社
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