にんぎょうの おいしゃさん にんぎょうの おいしゃさん
作: マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵: J.P.ミラー 訳: こみや ゆう  出版社: PHP研究所 PHP研究所の特集ページがあります!
こみやゆう選書・翻訳「おひざにおいで」シリーズ第2弾!
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やなせたかしさんや手塚治虫さんが、「君平ちゃんは天才だ」と認めてくだいました。

───今、お子さんをお持ちのお母さんの中には、東君平さんのことをNHKの「おかあさんと いっしょ」の中で放送されたアニメ「ひとくちどうわ」で知ったという方も多いと思います。奥さまから見て、東君平さんはどんな人でしたか?

ユーモアもセンスもあって、とにかく才能あふれる人でしたね。私は彼が新宿・伊勢丹で行った初めての個展「白と黒の世界」を見て、彼の才能に惚れました。当時、私はある企業で広報部に所属していましてね。彼の作品があまりにもシャープですばらしかったから、上司に「この人を使ってみてはどうですか?」ってお知らせしたんです。そうしたら、あれよあれよという間に広告に使うことが決まりました。

───最初は仕事を通じて、君平さんと出会ったんですね。

でも、仕事は上司が担当していましたから、私は全然関係なくて。君平さんとはじめて会ったのは、会社の廊下。お互いすれ違うくらいの時間でした。君平さんは、水色の袖がちょっと独特な形のポロシャツを着ていて、すごくかわいらしいなって思ったんです。でもその一瞬で、彼が私のことを気に入ったみたいで、用事もないのに会社にやってきて、オフィスで会うことが増えたんです。

───君平さんは、英子さんに一目ぼれだったんですね。

どうなんでしょうね。だけど、すごく迷惑でねぇ……。当時、私には婚約者がいたの。医学生だったんだけれど、お医者さんになってから一緒になりましょうって約束していたんです。でも、君平さんは私の実家を訪れてね、「婚約を白紙に戻してください。英子さんと結婚させてください」って直談判したの。私はそれを後で母から聞いて、ビックリ! でも母に「私だったら、君平さんの才能に賭けてみるわ」と言われて、君平さんと一緒になることに決めました。

───大恋愛だったのですね。

でも彼は、自由な人すぎて、全然、大事にしていただけなかったのよ(笑)。結婚前にね、私は、これはしないでほしいっていうことを箇条書きにしていたんです。それを見た君平さんは「はい、守ります」って言ったんだけど、全部ウソ(笑)。あるときはね、「今日は、千葉に取材に行ってきます」って言うから、「いってらっしゃい」って見送ったの。でも、夜になっても帰ってこなくて。千葉だったら日帰りで行けるのにおかしいなって思っていたら、23時ごろに電話が鳴って。電話越しに君平さんが「夜は寒いですね」って言うから、「こちらは暑いくらいですよ。千葉も暑いんじゃないですか?」って答えたら、「ぼくは今、函館にいます」って。どうして、千葉が函館になったんだろうってふしぎでした。

───たしかに……(笑)。

ほかにもね、「ぼくの親友がスウェーデンに住んでいるから、10日ばかり会いに行ってきます」って出かけて行ったこともありました。「留守の間はこれでやりくりしてください。今は入っていないけれど、入ってきますから。」って、空の通帳を置いていってね。でも、それから2カ月くらい帰ってこなくて、頼りの入金も全然なくて、苦労したこともありました。

───それは大変!

本当に、二人の娘の上にもうひとり、大きな子どもがいる感じ(笑)。でも、夫婦ゲンカはありませんでした。君平さんは「出かけるとき鬼のような顔で送ったら、それが一生の別れになることもあるから、やめようね」って言うんです。そして、「疲れて帰ってくるのに、怒るために起きているくらいなら、先に寝ていてくださいね」って。だから私、笑顔で「いってらっしゃい」って送り出して、「おかえりなさい」って迎えるしかなかったのよ。

───さすが! ことばに力があります。

上手でしょう(笑)。でも、子どもたちにとっては良いパパだったと思いますよ。とにかく優しいですし、怒らない。いつだったか私が「娘たちを叱ってください」ってお願いしたら、「どうして叱るの? 電車には乗れるし、お使いには行ける。何よりきちんと挨拶ができる子なのに。どこがいけないんですか?」って聞いてくるんです。たしかにそうだって、そのときは反省しましたね。

───お子さんたちは、お父さんの仕事についてどう思っていたのですか?

それについては、あまり聞いたことはないですね。でも、君平さんはいつも私が見える所で、仕事をしていましたから、仕事をしている父親の姿が、常に身近にある環境だったと思います。あるとき、君平さんが娘に「未奈ちゃんは良いね。テストで0点を取っても、次に100点を取ればいいんだもんね。だけどパパのお仕事はね、常に100点を取らないとなくなっちゃうんだよ」って言っていたことがあって、仕事の大変さを教えているようでしたね。

───君平さんほど才能のある方でも、そういう風にご自身の仕事について考えていらしたんですね。

そうですね。周りの方は彼の才能を認めてくださったけれど、世間一般にはそこまで知られている訳ではないので、そういう考えは持っていたのかもしれません。

───当時、君平さんの才能に気づいていたのは、ごく一部のプロの方たちだったのですね。

やなせたかしさんや手塚治虫さんが、特に認めてくださってね。「君平ちゃんは天才だ」って方々でおっしゃってくださいました。君平さん自身も、とても人が好きな人だったので、いろいろな人にかわいがられ、愛されていたと思うんです。やなせさんは、「君平ちゃんみたいなすごい人を放っておくなんて、世間って変だよね。ぼくなんか君平ちゃんの足元にも及ばないんだよ」っていつも言ってくれてました。手塚治虫さんは、旅行に行く計画が出たとき、よく「君平ちゃんが行かないなら、ぼくもパスする」っておっしゃるんです。だから、いつも君平さんに声がかかったりしてね(笑)。

───人としての魅力もお持ちの方なんですね。

その根底には、自身が幼少時代母親の愛情をあまり受けられずに育ったことがあったんだと思います。私には、「愛をください。ぼくを愛してください」っていつも叫び続けている感じがしました。だから私も、彼と一緒にいることを選んだんですよね。でも、ずっと支えていくんだと思っていたのに、あんまり早くに亡くなってしまいました。今は、けんかはしておけば良かったな、なんて思ったりもするんです。そういうことも、思い出に残るでしょう。

───「くんぺい童話館」は君平さんが亡くなった後に完成したと伺いました。

そうです。元々、生前にこの土地を手に入れていて、いつか「美術館を作りたいね」という夢を持っていたんです。ここはJR小海線の線路がすぐそこにあって、2時間に1本電車が通るんですよ。その赤い電車がすごく気に入ったと言っていました。でも、土地を買ったすぐ後に亡くなってしまって、あまりに突然だったから、しばらくの間、私、目にする景色がすべて色を失ったような、砂漠を歩いているような感覚でした。娘たちがアルバイトをしたりして、生活費を入れてくれていたんですが、あるとき「ママ、パパが亡くなってもう半年たちました。いつまでもそんな風にしていたらダメでしょう」って言われたんです。それで、「もうそんなに経ったんだ。何かしなくちゃ」って思って、君平さんの作品の整理をはじめました。するとやっぱりどの絵もすばらしくて、「この絵をこのまましまってしまうのはもったいない。何とか飾る器が欲しい」と、生前に話していた美術館の夢を叶えることにしました。


小淵沢にあるくんぺい童話館

───まるで君平さんのお家に訪れたような暖かな雰囲気の美術館ですね。

いつまでもどこかで君平さんが息づいているようにという思いで、作った美術館ですから、私もお客様をお迎えするとき、「よく君平さんの家に遊びに来てくれました」という気持ちで、お茶をお出しして、お話させていただいているんです。

───今、くんぺい童話館では『こねことこねこ』『うたうたう』の原画展が開催中ですよね。原画が残っていたということがとてもすごいことだと思いました。

私もまさか残っているとは思っていなくて……。廣済堂あかつきさんから、君平さんの作品を出版したいと伺ったとき、念のため保管されている作品を調べてみたんです。そうしたら、とてもきれいな状態で残っていたの。ああ、良かった、これを使ってもらえるわって安心しました。やっぱり、本物の原画を使って本を作ってもらった方が、君平さんも嬉しいだろうし、読者の方にも君平さんの絵のよさが伝わると思ったんです。作品ももちろんすばらしいですが、もしお時間が許すなら、ぜひ、くんぺい童話館にお越しいただいて、原画も見ていただければ嬉しいですね。

───絵本ナビでも、原画展のことをご紹介させていただきたいと思います。今後、君平さんの作品を出版する予定などはあるのでしょうか?

2018年に「ことばのひろば」シリーズ(廣済堂あかつき)の新刊として、「ことばのほん」で連載されていた、「としちゃんのべんきょう」(1990年に童心社から『おとうさんとあいうえお』として刊行)が、判型などを変えて1冊にまとまると伺っています。そのほか「にゃんこちゃんえほん」シリーズ(復刊ドットコム)や『くろねこかあさん』(福音館書店)は変わらず、出版されていますので、皆様に手に取っていただけると思います。

───『こねことこねこ』『うたうたう』を読んで、新たに君平作品のファンになる読者も多いと思います。

普通、30年も経ったら、どんなに有名な作家さんでも本屋さんから作品が消えてしまうと思うんですけど、君平さんの作品は未だに新刊として出版していただいて、多くのお子さんに読んでいただけるから、本当に幸せだと思います。今回出版された新刊も、ぜひ、いろいろな人に楽しんでいただけたら嬉しいですね。

───この2冊を通じて、改めて東君平さんの魅力を多くの方に知っていただけると思いました。今日は、本当にありがとうございました。

『こねことこねこ』『うたうたう』の動画を公開しました。

取材協力/くんぺい童話館

〒408-0041 山梨県北杜市小淵沢町上笹尾 3332-930(地図は、こちら
TEL:0551-36-4514 / FAX:0551-36-5371
開館日:金・土・日(これら以外にも開館日がある場合には、右上の「速報」欄にてお知らせします)
※ 8月1日〜8月下旬は無休。11月下旬〜4月中旬は冬休み。
開館時間:10時00分〜17時00分 / 入館料:大人 600円、子供 300円
電子メール:kunpeimail@docca.net

≪東君平 没後30年記念出版≫
『うたうたう』『こねことこねこ』原画展開催中!
会期中に、展示の入れ替えがあります。
期間:2017年7月〜11月下旬
場所:くんぺい童話館

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取材・文/木村春子
撮影/所靖子

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作品紹介

こねことこねこ
こねことこねこ の試し読みができます!
作・絵:東 君平
出版社:廣済堂あかつき
うたうたう
うたうたうの試し読みができます!
作・絵:東 君平
出版社:廣済堂あかつき
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