「子どものための生活指南書」として人気が定着している『ななちゃんのおかたづけ』と、『ななちゃんのおきがえ』(赤ちゃんとママ社)。子どものチャレンジを見守ってくれる、とっても頼もしい生活絵本シリーズです。
楽しいおはなしを通して日常生活のコツを分かりやすく教えてくれていて、絵本ナビのレビューコンテストでも人気の作品。たくさんの実体験レビューが寄せられています。
今回は、作者のつがねちかこさんに、「ななちゃんの絵本」シリーズができるまでのことを伺いました。絵本作家であり、娘さんのいるママでもあるつがねさんご自身についても、たくさんお話いただきました!
- ななちゃんのおかたづけ
- 作:つがね ちかこ
おかたづけアドバイス:鈴木 尚子 - 出版社:赤ちゃんとママ社
はじめてのしつけのひとつの「おかたづけ」。 おかたづけのしくみが3つのステップで紹介されているので、小さな子どもにもわかりやすく、絵本を通して楽しみながらおかたづけが身につきます。
● 「しつけ」を目的とした教材とは、違った形にしたいと思いました。
───『ななちゃんのおかたづけ』は、2014年の発売以来、2017年で9刷目の重版になったそうですね! 絵本ナビに寄せられているレビューにも、たくさんの親子のエピソードが載っていますが、読まれてみていかがですか?
たくさんのレビュー、ありがたいです。お子さんとのことや、大人も変わったという声もあって、とても嬉しく思っています。
───この絵本がどんなきっかけで生まれたのか、改めて伺えますか?
編集者さんから、ライフオーガナイザーの鈴木尚子さんの『もっと心地いい暮らし―自分らしい収納スタイルのつくり方』(出版社:中経出版)を紹介していただきました。鈴木さんのおかたづけメソッドを踏まえつつ、絵本として子どもが楽しめるような作品を作れないか、というお話をいただいたのが最初です。
───依頼を受けて、どう思われましたか?
おかたづけの「しつけ」を目的とした教材はあると思うのですが、私は、この作品はそれとはまた違った形にしたいと思いました。絵本の形にするからには「絵本」として成立させたいと思ったんです。なので、おかたづけのメソッドを、いかに自然なかたちでおはなしに入れるかという部分でとても苦労した思い出があります。
───おもちゃたちから、正しいおかたづけをお願いされるという展開に、子どもたちは心を動かされますね。おもちゃが教えてくれるというストーリーは、はじめから決めていたのですか?
『ななちゃんのおかたづけ』が出版されたとき、娘が、ななちゃんとちょうど同じ歳くらいだったのですが、この絵本の企画を聞いてすぐ、おもちゃたちが子どもに話かけてかたづけをお願いする設定にしようと思いました。その頃の娘は、私が言っても聞いてくれないときに、ぬいぐるみやお気に入りのおもちゃの声色を作って「〇〇して〜!」なんて言うと、楽しくなってやってくれる、ということがよくあったんです。
───同じ場所にポンとまとめて片付けたら、お人形のメアリーのドレスがクレヨンで汚れてしまって、メアリーが泣いてしまうという場面では、なるほど!と納得しました。種類別に片付けないといけない理由がよく分かります。
クレヨンもおもちゃも一緒にしまっていたなんて、ななちゃんは、かなり雑ですね(笑)。鈴木さんのメソッドで示している「おかたづけのしくみ」は、「いるものといらないものに分ける」「仲間を分ける」「おうち(住所)を決める」の3つなのですが、仕分けをしたあと別々の場所にしまうステップを、どうおはなしにするかでとても悩みました。しまうところを、メアリーが「おうちに帰る」という形で表現したくて、ページのコマ割りの順番を何回も入れ替えました。
───ただ「かたづけないとダメ!」ということでなくて、おもちゃの気持ちを考えて、別々のおうちに返してあげるのが優しくて素敵ですね。
おかたづけのメソッドは、ご自宅でも実践されたのでしょうか?
ななちゃんが発売された頃は、娘も3歳でよくわかっていなかった部分もあったのですが、最近は娘も6歳になって、具体的に自分でおもちゃを戻す「おうち」を決めて、そこにしまうというのが、やっとできてきたかなと思います。ゴチャゴチャにしているときは、メアリーたちのおはなしを思い出してもらっています。
お子さんが小さいときは、大人が「おうち」を決めてあげることが大事ですよね。子どもが覚えやすくて、しまいやすい「おうち」を決めるのはなかなか難しい! でも、当時はそれさえ決まれば何とかなる、と思ってやっていました。
───最後のページには、大人向けに、鈴木尚子さんからのおかたづけのアドバイスが載っているのも勉強になります。
「かたづけながら『これはどうしたらいいんだろう?』と考えたり工夫したりする積み重ねは、その後の人生における人間関係や情報、時間、思考など『見えないもの』の整理の基礎になると私は考えます。」という言葉にハッとしました。子どものときから、きちんとかたづいていると気持ちいいという感覚が身につくと良いですよね…。
小さい子どもにとってかたづくことが気持ち良いと認識するのは、難しいですよね。
私でも、かたづけると快適になると気づいたのはつい最近です。それこそ、はじめのななちゃんみたいにボンボンひとつのところにかたづけて、そのまま大人になったので(笑)。小さい頃からその感覚が身につけば楽だろうなあと思います。
───やっぱり習慣づけるしかないんですね。
積み重ねですよね。なので、『ななちゃんのおかたづけ』を読んで、おかたづけに楽しく向き合えるようになったという子どもがたくさんいてくれて、とても嬉しいです。