もうなかないよ、クリズラ もうなかないよ、クリズラ
作: ゼバスティアン・ロート 訳: 平野 卿子  出版社: 冨山房 冨山房の特集ページがあります!
読み手の年齢を選ばない子どもから大人まで、それぞれの感性で理解してうけとめる事のできる「みんなの本」です。
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国際アンデルセン賞受賞記念 スペシャル対談『わたしを わすれないで』翻訳・角野栄子さん×金柿秀幸

魔女の宅急便」シリーズ(福音館書店)や「小さなおばけ」シリーズ(ポプラ社)の作者として有名な、児童文学作家の角野栄子さんが翻訳を手がけた、『わたしを わすれないで』(マイクロマガジン社)。角野さんが、この本の翻訳を引き受けたのは、角野さんご自身の体験と物語のテーマ性が結びついた、ある「理由」がありました。
絵本ナビ代表・金柿秀幸との対談では、「父」と「娘」それぞれの立場から、物語を通した親子の交流や、物語が与えてくれるパワーについて語り合いました。また、2018年3月26日の「国際アンデルセン賞」作家賞受賞に寄せて、改めて角野さんの創作意欲についてお伺いします。

わたしを わすれないで
わたしを わすれないでの試し読みができます!
著:ナンシー・ヴァン・ラーン
イラスト:ステファニー・グラエギン
翻訳:角野 栄子
出版社:マイクロマガジン社

わたしの おばあちゃんは、 おりょうりも おかしづくりも おそうじも、 なんでも じょうずに できる やさしい おばあちゃんだった。 でも、おばあちゃんは すこしずつ わすれんぼに なっていったの。 幼いジュリアには、おばあちゃんの身に何が起こったのかまだ理解できません。 それでもひとつひとつの現実を受け止め、おばあちゃんに寄り添います。 たとえ忘れていても、つながりは途切れないことを教えてくれる こころ温まるお話。

「楽しい」と思うと心が自由になる

金柿:この度は「国際アンデルセン賞」作家賞の受賞、おめでとうございます。ぼくも娘も角野さんの大ファンで、お話しをする機会をとても楽しみにしていました。よろしくお願いします。

角野:ありがとうございます。よろしくお願いします。

金柿:娘が小さいころから、たくさん読み聞かせをしたり、朝、娘といっしょに駅まで歩く間に、いろいろな話をしたりしてきました。
角野さんの著書やインタビューを読むと、小さいころにお父様から話してもらった物語や、歌、フレーズからいろんなものを受け継いでいて、それが、物語を作る原動力のようなものになっているそうですね。

角野:そうなんです。私が5歳のときに母が亡くなりましたので、残された3人の子どもが寂しがらないようにと一生懸命だった父が、いろんな話をしてくれました。
でも、情操教育に良いとか、勉強に役に立つといった内容の話ではなく、新聞で連載していた宮本武蔵の物語や無声映画の話だったんです。なんていうのかしら、親の欲ではなくて、まずは残された子どもの心の隙間を埋めてあげたいという、そういう気持ちで話をしてくれたんだろうと思います。

私の父はユニークな人で、下町生まれでしたから、いろんな言葉の遊びみたいなものを使ったり、調子やリズムを持った言葉だったり、講談的だったりと、変化のある言葉遣いをしていました。そういったことが、知らず知らずのうちに、私の中に入ってきていて今の作品づくりに影響しているのかも知れません。
父も、物語を読んだり、無声映画を観に行ったりすることが楽しかったんでしょうね。自分が楽しいと感じたことを話してくれるという、立ち位置だったんです。だから、父が話してくれる物語は、私たちにもすごく楽しく伝わったのだと思います。

金柿:お父様は、ご自分が楽しいと思ったことをお子さんたちに伝えて、一緒に楽しい時間を過ごしたということですね。

角野:そうです。楽しいということは、すごく大事ですよね。とかく大人は、「本を読む子は良い子だ」という感じがありますけれども、そればかりが良い子ではないですから。

───『ファンタジーが生まれるとき』(岩波書店)で書かれていましたが、お父様のおはなしはその場の1回で終わるのではなく、続きは「また明日ね」となることも多かったそうですね。

角野:そうそう。でも「また明日ね」が本当に明日になるわけじゃなかったんです。いつ続きが聞けるかわからないから、待っている数日間、姉と「どうなるのかな?」と話をして過ごすのがとても楽しい時間でした。
今思えば、そのときに、想像力というのかしら。「こうなったらおもしろい」という次のおはなしの展開がいっぱい心の中に湧いてきて。私は、そういう瞬間が、すごく本を読むのに大事だと思うんです。


対談中に、愛犬のロメオくんが角野さんのお膝の上に。

金柿:ぼくは、娘と話しながら一緒に想像して楽しむことがありました。
例えば、マンションといえば長方形なイメージがありますが、ある日たまたま見かけたマンションが、一番上の階だけ部屋数が1つ少なくて、ボコッと欠けた形をしていたんです。
「なんで1つないんだろうね。前はあったんだけどな」とぼくがうそを言うと、娘が「え! どうしちゃったんだろう。台風で飛ばされちゃったのかな。それとも地震で1つだけ落っこちちゃったのかな」なんて想像して答えてくれるのが、かわいくもあるし、楽しくもあって(笑)。

角野:子どもがいろいろ想像するのは、いいですよね。そんな風に、見たものや体験したものが、ちょっとした発想から物語になっていくんですよ。
見たものがすぐ物語になるわけではないけれども、言葉が心の中に積もっていく。記憶というものは、ぐちゃぐちゃに混ざり合って体の中に残っているものだから、ある日なにかのきっかけでふと思い出したり、「ああ、この感じはどこかで感じたことがあるかしら」という風に思ったりするんです。だから記憶というのは、「言葉にならない言葉」みたいなものだと思うんですよね。

金柿:体で感じたことと心で受け取ったことが、混ざって塊になったものが、記憶になっているというイメージでしょうか。

角野:ええ。それが豊かにあるのは、小さいときにおはなしを聞いたり、自分で本を読んだりすることによって、得られる部分がすごく大きいと思うんです。でもやっぱり、大事なのは「楽しい」ということですよ。

金柿:楽しいと、心に言葉がすんなり入ってくる感じがしますね。

角野:そうです。楽しくなければね、どんなものを読んだってダメですよ。やっぱり楽しいということは、心が自由な状態ってことですからね。

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角野 栄子(かどの えいこ)

  • 1935年東京都生まれ。早稲田大学教育学部英語英文科卒業。日本福祉大学客員教授。1984年に路傍の石文学賞を受賞。「おおどろぼうブラブラ氏」(講談社)でサンケイ児童出版文化賞大賞、「魔女の宅急便」(福音館書店)で野間児童文芸賞と小学館文学賞を受賞。
    絵本に「ケンケンとびのけんちゃん」(あかね書房)、「ぼくびょうきじゃないよ」(福音館書店)、童話に「ちびねこチョビ」(あかね書房)など作品多数。

作品紹介

わたしを わすれないで
わたしを わすれないでの試し読みができます!
著:ナンシー・ヴァン・ラーン
イラスト:ステファニー・グラエギン
翻訳:角野 栄子
出版社:マイクロマガジン社
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