杉浦さやかさんと言えば、おしゃれなイラストエッセイや雑誌の連載で、幅広い年齢層にファンがいる人気作家さん。このたび絵本『そらはあおくて』(あすなろ書房)の絵を手がけられました。
原作は、アメリカの絵本作家、シャーロット・ゾロトウ。女の子が古いアルバムをめくるところからはじまる、母娘4世代に渡るちいさな幸せの物語です。
どんな思いで絵を描かれることになったのか、お話を伺いました。
- そらはあおくて
- 文:シャーロット・ゾロトウ
訳:なかがわ ちひろ
絵:杉浦 さやか - 出版社:あすなろ書房
古いアルバムの中でほほ笑むのは、今とは違う服を着て、今とは違う家に住む女の子。 お母さんも、おばあちゃんも、昔は「小さな女の子」だったなんて、ほんとかな? でも、いつの時でも、空は青くて、草は緑……。
●青空と、草に寝転ぶ子どもを描きたかった
───絵本ナビ読者の中にも、杉浦さやかさんのファンという方は多くいらっしゃると思います。イラストエッセイは毎年のように出版されていると思いますが、絵本の出版は8年ぶりだとか……?
そうですね。実は大学4年生からイラストの仕事を始めて、ちょうど2018年がデビュー25周年だったのですが、絵本は2010年に『りらのひみつのへや』(学研)を出版して以降、しばらく遠ざかっていたんです。
絵本が大好きだからこそ、次作はちょっと時間を置いて、力をつけて向き合いたいと思っていました。そしたらこのような素敵な作品に絵を描かないかというお話をいただいて。
───依頼があったのは、いつ頃ですか?
2年半前です。『童謡えほん』(あすなろ書房)でお仕事をご一緒した編集者さんから、「杉浦さんにぴったりの絵本があるんですけどどうですか」と、訳の草案を送っていただきました。
───それが今回の『そらはあおくて』だったのですね。
はい。原書は『THE SKY WAS BLUE』。なかがわちひろさんの訳文を読んですごく感動して、「描きたい!」と思いました。「描きます!」とすぐにお返事しました。
───なぜ「描きたい」と思ったのでしょうか。
とにかくおはなしが素晴らしいんですよね。はじめて訳文を読んだとき、わくわくして、頭には絵が浮かんでいました。読み終わったらもう涙が出てきて……。
ちょうどその頃、娘が生まれて3歳くらいだったのかな。自分と娘にも当てはまるおはなしで、これは今わたしが描きたい絵本だ、今描かなくては、と思いました。
───ご自身も子育て中でいらっしゃるんですね。
もうすぐ6歳になる娘がいます。作品の中で古いアルバムを見ながら「このこ、おかあさんなの?」と尋ねている子は5、6歳くらいかなと思って、草案を読んだときから、娘が5歳になるまでに絵本を完成させたい!と勝手に思っていました。ぎりぎりで間に合いました(笑)。
───「おかあさんが こどものころって、いまと なんだか ちがうのね」という女の子に、おかあさんが返す言葉が素敵ですよね。
「たいせつなことは すこしも かわっていない。
そらは あおくて、くさは みどり。
ゆきは しろくて つめたくて、
おひさまは まぶしく あたたかい。
いまと おんなじだったのよ」
この「そらはあおくて……」一文が繰り返し出てくるのですが、なかがわちひろさんの訳のリズムが、すごく気持ちいいんです。やさしくて、大きく包み込まれるような感じが伝わってきて……。何度読んでも胸に迫る文章だなあと思います。
───アルバムをめくりながら女の子は、お母さん、おばあちゃん、ひいおばあちゃんの小さい頃に思いを馳せます。写真はカラーからセピア色になり、だんだん古くなっていきますが、おかあさんと子どものやりとりは変わらないですね。
どれだけ時代をさかのぼっても変わらない、普遍的なものや、親子の深い結びつきが、1冊をとおして描かれていますよね。
───先ほど、訳を読んですぐ絵が浮かんだとおっしゃっていましたが、どんな絵が浮かんでいたのですか?
青空の風景や、草原に寝転がっている女の子の姿だったと思います。わたしはこの絵を描きたくて、『そらはあおくて』を描いたような気がしているんです。
主にマーカーで色を塗っていますが、青空の部分はとても大切で、とりわけ印象的に仕上げたかったので、色鉛筆で塗っています。だから色鉛筆の中で「水色」だけが飛び抜けて減っているんですよ。
───夏と冬では空の色が違いますが、どちらも女の子を包みこむようなやさしい青空ですね。