おはなし会で常に人気のシゲタサヤカさんの絵本。おいしそうな食べ物、ちょっととぼけた(時にやさぐれた?)ユニークなキャラクター、あっと驚く展開に、毎回魅了されます。そんなシゲタサヤカさんの待望の新刊は……『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(白泉社)。実に4年半ぶりの新刊です! さて、どんなおはなしなのでしょうか。シゲタサヤカさんにインタビューしました。
商店街で「しりとり大会」開催!おすしやさんにパンやさん、ラーメンやさんチーム…優勝はどのお店!? 笑い&涙ありで、心も満腹に!
●「ん」がつくと参加もできないなんて、そんなシビアなルールは遊びじゃない!?
───シゲタサヤカさんの新刊をとっても楽しみにしていました。
『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』は、どんなおはなしですか?
ある商店街で、お店対抗の「しりとり大会」が開催されることになります。「優勝チームには、なんでもほしいものをプレゼント!!」ということで、大会に出場する食べ物たちは大はりきり。いったい優勝はどのチームになるのか……というおはなしです。
───「なんでもほしいものをプレゼント」なんて、太っ腹! こんな手紙が届いたら、はりきっちゃいますね。シゲタサヤカさんの絵本と言えばやっぱり食べ物ですが……。
はい。食べ物のお店対抗なので、食べ物だけのしりとりの絵本です。なぜ?と聞かれると困っちゃうんですが……やっぱり、食べ物を描くのが好きなので、どうしても食べ物をテーマに絵本を描かずにはいられないです。
───デビュー作『まないたにりょうりをあげないこと』(講談社)から始まり、『りょうりをしてはいけないなべ』『コックの ぼうしは しっている』(以上、2冊とも講談社)で洋食、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)でラーメン、『キャベツがたべたいのです』(教育画劇)で野菜・果物、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)ではいろいろな種類のおにぎり。ありとあらゆる食べ物を描いていますね。
コックさんと、お皿に盛りつけられた料理を描くのが特に好きだったので、最初の絵本は洋食屋さんを舞台にしました。
でもお寿司みたいなリアルなものを描くのはちょっと苦手なんです……。今回、雑誌『kodomoe(コドモエ)』(白泉社)の付録絵本から単行本化するにあたり、実はいくつか描き直しています。特につぶがいは、単行本のほうがおいしそうになりましたよ!
───『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』は、もともと付録絵本だったのですね。
そうなんです。掲載後に雑誌についている読者アンケートを通じて、2歳と6歳のきょうだいで一緒に楽しんでいますとか、小学生の男の子が感動して泣いちゃったとか、お父さんが共感してくださっているとか、色々な感想をいただいて嬉しかったです。
───男の子に、お父さん……? 男子の心をくすぐるものが、何かあるのでしょうか(笑)。
そのあたりは分からないんですけど、今回に限らず、これまでの作品も「お父さんが気に入っている」という声をよく聞きます(笑)。
───なぜテーマを「しりとり大会」にしようと思ったのですか?
『kodomoe(コドモエ)』の付録絵本を作りませんかと声をかけてもらったときは、 いつも描いている作品よりももう少し対象年齢の低い、未就学のお子さんが楽しめるものを、ということだったんですね。展開がシンプルで、食べ物の絵が生きるもので……「しりとりはどうだろう?」という案が、最初から候補の1つにあったんです。
しりとりの、最後に「ん」がつくと終わってしまうという部分を活かせたら……と思い、まずそこからおはなしを考えました。
「ん」がつく食べ物の名前を使うと、しりとりは終わってしまうけれど、コックさんが料理して「ん」がつかない食べものに変身させれば、しりとりを続けられる……というアイデアを、初めに思いつきました。
たとえば、「にんじん」を「にんじんジュース」に、「プリン」を「プリン・ア・ラ・モード」に変身させたら、「にんじん」も「プリン」もしりとりに使えますよね。これは面白くできそうだと思い、「しりとりコックさん」という仮タイトルもつけて、この方向でラフを作りますね、と、編集者さんと話していたのですが、なかなかストンとオチが決まらなくて、ちょっとひっかかっていました。
そしたら、たまたま、ラフを出すはずだった打ち合わせの日が、先に延びたんです。その延びた間に……ひらめいたんです(笑)。
───ひらめいたんですか!?
はい。毎日しりとりのことばかり考えていたので、だんだん「ん」がつく食べ物に感情移入してしまって。「ああ、『ん』がつく食べ物ってしりとりに参加すらできないんだ。かわいそうだなあ……。そもそもしりとりって、ルールがシビアで、遊びやゲームというより競技みたいじゃない?」って思った瞬間……「そうだ、しりとり大会だ!」と。
「ん」がつくかわいそうな食べ物たちと、しりとり大会。「よし、これでいこう」と思ってからは、ストーリーができるのも早かったです。ラストの、ちょっとドラマチックな展開もすぐに思いつきました。食べ物のお店屋さん対抗ということで、「あ、あのお店も使っちゃおう!」と、過去の作品に出てきたお店も登場させながら、一気にラフを作りました。
───八百屋さん、パン屋さん、ラーメン屋さん、洋食屋さんと、どこかで見たことがある店構えのお店が登場するのは、そういうわけだったのですね!