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作: のはな はるか  出版社: くもん出版
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降矢奈々×フィリップ・ジョルダーノ展&『黄いろのトマト』降矢奈々さんインタビュー

2013年11月1日(金)から開催される「コニカミノルタプラザ特別企画 異郷の絵本作家たち 降矢奈々×フィリップ・ジョルダーノ展」は、スロバキア在住の絵本作家降矢奈々さんと、日本で活動を展開するイタリア人作家フィリップ・ジョルダーノのお二人の作品を紹介する展覧会です。
違う文化、社会に適応しながら精力的に創作を継続されているお二人が、どんな展示を見せてくれるのでしょう。
今回、発売されたばかりの絵本最新作『黄いろのトマト』(宮沢賢治作 降矢なな絵ミキハウス刊)の原画も全点展示されるという降矢奈々さんにお話を伺うことができました!「おれたち、ともだち!」シリーズや『めっきらもっきらどおんどん』など、人気作品を沢山手がけられている降矢さん。新作絵本のエピソードから展覧会開催に寄せた想いまで、たっぷり語っていただきました。

宮沢賢治の絵本 黄いろのトマト
作:宮沢 賢治
絵:降矢 なな
出版社:三起商行(ミキハウス)

読む者の心の中に、 いい知れぬ愛しさと切なさを残す珠玉の作品を、 スロバキアに暮す画家、 降矢ななが渾身の思いをこめて描き出した。 あたかも一本の映画をみたかのような 深々とした思いに胸をつかまれる作品。 独特の世界観で人気の宮沢賢治の作品。 こどもたちには新鮮な感動を、 大人には一味違う読みごたえのある物語絵本です。

───降矢さんの最新作は宮沢賢治の絵本シリーズ『黄いろのトマト』。様々な絵本作家の方 が取り組まれているこのシリーズですが、遠いスロバキアに住む降矢さんのところに絵本制作の依頼のおはなしが届いた時のことについて教えていただけますか?

たぶん5年位前だったと思います。編集者の松田素子さんからメールをいただきました。
ちょうどその頃、この絵本のシリーズで荒井良二さんの『オツベルと象』やあべ弘士さんの『なめとこ山の熊』が出て評判になっていました。だから、そのシリーズで絵本を描かないかと依頼が来た時は、うわぁー!と興奮しました。ほんとうに舞い上がると言うか、嬉しかった。と同時に、賢治の絵本を私に描くことができるのかと考えはじめたら、ものすごく不安になってしまいました。
松田素子さんが名物編集者であることも知っていたので、怖気づきもしました。だけど、宮沢賢治の絵本を作るのは私の夢だったので、松田さんとメールのやりとりをして、やってみようと決めました。

───幼い兄妹ペムペルとネリの愛おしくて悲しいこの物語。
博物館に飾られている蜂雀の剥製の口から語られるという設定や、ペムペルとネリが二人だけ で暮らすようになる経緯の原稿が1枚抜けているということなど、賢治の童話の中でも不思議な部分が多いように思います。初めて読まれた時にはどんな印象を抱かれましたか?
また降矢さんの中での宮沢賢治の存在を少し教えていただけますか?

このお話は、編集者さんが送ってくれた私用の候補作品の中の一編でした。この時にはじめて読みました。一読して、「なんて希望のない話。このお話の絵本は作っても売れないなぁ」と思いました(笑)。
だけど私にはペムペルとネリが見たサーカスのパレードがものすごく魅力的でした。この二人の目に映った摩訶不思議なパレードの場面を描きたいと思いました。それから、トマトも。我が家の庭で毎年いろいろな野菜を育てているのですが、その中にトマトもあります。私は、トマトの生命力の強さが好きでした。だから、お話にトマトが出てきて、これは私が描くしかないって思ったりして(笑)。宮沢賢治のお話は、実家に本が二冊あって、小さい頃、母が読んでくれました。「どんぐりとやまねこ」や「雪わたり」「注文の多い料理店」など大好きでした。「風の又三郎」はよく理解できなかったけれど、言葉のひびきがちょっと怖かったです。賢治の作るお話はバタ臭いのに日本独特の湿っぽさがあると思います。まじめなのにユーモラスでちょっとこわい。そういう賢治の世界を、いつか絵本に描けるようになりたいとずっと思っていました。だけど、これまで茂田井武、赤羽末吉、堀内誠一などすばらしい画家が大切に絵を作り上げてきていたので、下手に挑戦して世界を壊してしまうようなことはしたくなかったです。

───賢治の童話と降矢さん。その組み合わせにドキドキしながらページを開くと、日本的でありながら異国情緒も漂う雰囲気の絵。ぴったりきていることに驚いてしまいました。
身近なようで、遠い国のような気もする景色。降矢さんは絵本を描かれる時、具体的な場所を想定していたりするのでしょうか?

お話を読んで浮かぶイメージに具体的な場所や建物を取り入れることがけっこうあります。でもそれを丸写しするというのではなく、パーツや印象とか。お話を読んでからそれを頭の中で反芻している時間があって、そういう時はアンテナを張っているから外出先で「あ、これお話のあの場面にいいな」とか「あの壁の色や質が使える」とか。それを写真に撮ったりして記録しておきます。だけど、その写真をそのまま絵にすることはなくて、あくまで記憶を引き出す道具みたいに取っておきます。そういうものが寄せ集まってお話の景色ができていると思います。

───文章から絵が具体的に浮かんでくるまでにはどのくらいかかるのでしょうか。今回の場合は、実際に絵を描き出されるまでは時間がかかりましたか? 

お話を読むとわりとすぐに頭に画像は浮かびます。でも絵本にしたいと強く思うのは、最低一場面、ものすごく魅力的なイメージが浮かび上がってくるお話です。また、文章の雰囲気も私には大事な要素なのでそれを生かせるように、全体の色とか墨絵風にしたいとか油絵みたいにしたいとか、最初に読んだ時の印象を大事にしてラフを作ります。

今回は読んで、頭にパッと浮かんだのは、国吉康雄の油絵画でした。私は国吉康雄の描く子どもや裏ぶれたサーカスの絵が大好きです。そのイメージを大切に絵本に持っていきたいと思いましたが、理想が高すぎて苦労しました。すんなり場面が描けたと思ったところも、編集者さんのアドバイスを聞いて納得すれば描き直しました。編集者さんもものすごくこだわりのある方で、私の気がつかないヒントを幾つも提示してくれました。

あと主人公の子どもたち。これはもう絵本ができてから言うべきことではないのですが、ペムペルとネリを西洋人風に描いたのは良かったのか悪かったのか、今も迷っています。でもこの名前で純粋の日本人にするのは抵抗がありました。しかし今度は舞台をまったく西洋にしてしまうのにも抵抗がありました。前に書いたように、賢治のお話には日本の湿っぽさがあるからです。

───このお話で、蜂雀とトマトは読み終わった後も強く印象に残りますね。
可愛らしいけど凛とした佇まいがとっても美しい蜂雀。輝くような実がなっているトマト。これらを描くために、参考にされたものはありますか?

ハチドリは自然科学博物館の剥製やネットの画像を参考にしました。
トマトは、それまでも我が家の庭で栽培していましたが、この絵本を描くにあたって「ポンテローザ」と「レッドチェリー」の種を手に入れ撒きました。トマトを実際に育てると、たとえば剪定すると青臭い匂いがただよってくるし、芽をつむ指先が緑色になったりします。そういう経験がトマトを描く時、気持ちの支えになります。
このお仕事をしたことの収穫のひとつは、ポンテローザがものすごく美味しいトマトだと知ったことです。スロバキアの人たちは家庭菜園を持つのが当たり前の生活をしています。ミニトマトは最近ポピュラーになってきました。

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降矢 なな(ふりやなな)

  • 1961年東京生まれ。スロヴァキア共和国のブラチスラヴァ美術大学で石版画を学ぶ。作品に『めっきらもっきらどおんどん』『ちょろりんのすてきなセーター』『きょだいなきょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『まゆとおに』(以上福音館書店刊)、『ともだちやシリーズ』(偕成社刊)、『赤いくつ』(女子パウロ会)、『もめんのろばさん』(ポプラ社)他多数。

作品紹介

宮沢賢治の絵本 黄いろのトマト
作:宮沢 賢治
絵:降矢 なな
出版社:三起商行(ミキハウス)
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